ギリシア史

『ギリシア史』、または『ヘレニカ』は、古代ギリシアの著述家クセノポンによって書かれた歴史書です。全7巻からなり、トゥキュディデスの『戦史』の続編として、紀元前411年から紀元前362年までの約50年間にわたるギリシアのポリス（都市国家）の動向を記録しています。

概要

トゥキュディデスの『戦史』は、ペロポネソス戦争（紀元前431年 - 紀元前404年）の全期間を網羅するはずでしたが、紀元前411年の記述で中断され、未完のまま終わりました。クセノポンはその後を継ぎ、『ギリシア史』を著すことで、ペロポネソス戦争の残りの部分を記述し、さらに紀元前362年のマンティネイアの戦いまでの歴史を記録しました。

『ギリシア史』の特徴として、クセノポンがスパルタに身を寄せていたことが影響し、スパルタに好意的な記述が多い点が挙げられます。そのため、客観性に欠ける部分があることは否めません。例えば、スパルタの敵対者に対する無視や軽視が見られます。レウクトラの戦いの記述では、勝利の立役者であるエパメイノンダスへの言及がほとんどなく、彼が『ギリシア史』に登場するのはずっと後のことになります。

内容

『ギリシア史』は、ペロポネソス戦争の終結から、スパルタの覇権、テーバイの台頭、そして最終的にはマンティネイアの戦いまで、古代ギリシアの重要な時期を扱っています。各ポリス間の複雑な関係、政治的な駆け引き、そして戦争の様子が詳細に記述されており、当時のギリシア社会の理解を深める上で貴重な資料となっています。

しかし、前述の通り、スパルタ寄りの視点であるため、他のポリスの視点や出来事に対する記述が不足している場合があります。そのため、『ギリシア史』を読む際には、その偏りを考慮する必要があります。

日本語訳

クセノポン『ギリシア史』全2巻、根本英世訳、京都大学学術出版会〈西洋古典叢書〉、1998-99年
ISBN 978-4876981106、ISBN 978-4876981144

外部リンク

Hellenica by Xenophon（英語訳全文、プロジェクト・グーテンベルク）
Barbaroi!「Hellenica」（日本語の全訳あり）

注意点

『ギリシア史』は、クセノポンの主観的な視点が含まれていることを理解した上で読む必要があります。他の歴史書や資料と照らし合わせながら、多角的な視点から古代ギリシアの歴史を考察することが重要です。特に、レウクトラの戦いにおけるエパメイノンダスの扱いや、スパルタ以外のポリスの動向については、他の資料を参照することで、より深く理解することができます。

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