アオギリ

アオギリ（青桐）について

アオギリ（学名: Firmiana simplex）は、アオイ科アオギリ属に分類される落葉性の高木です。別名としてケナシアオギリとも呼ばれます。和名はこの木が、キリ（桐）に似ていて、幹の肌が青緑色であることに由来します。中国名である梧桐（ごとう）も日本ではよく知られており、公園樹や街路樹として広く利用されています。

分布

アオギリは、中国南部や東南アジアが原産地です。日本では、沖縄や奄美大島に自然分布していますが、古くから日本各地に植栽されてきたため、本州、四国、九州でも野生化した状態で見られることがあります。特に暖かい沿岸地域でよく生育し、伊豆半島や紀伊半島などでも野生化が見られます。

形態と生態

アオギリは、樹高が10〜20メートルに達する高木で、幹は直立します。若い木の樹皮は緑色で滑らかですが、成長するにつれて灰褐色を帯び、縦に浅い筋が入るようになります。春には赤い芽を勢いよく伸ばし、大きな葉を広げます。

葉

葉は互生し、長さ40〜50センチ[[メートル]]にもなる大きな葉身を持ちます。葉身は薄い卵形で、掌状に3〜5つに浅く裂けています（通常は5裂）。葉の基部は心臓形で、縁には鋸歯はありません。新芽には、淡い赤茶色の軟毛が密生しており、特徴的です。秋には黄色く紅[[葉]]し、柄がついたまま落葉します。紅[[葉]]は比較的早く褐色を帯びます。

花

花期は初夏から夏（5〜7月）で、枝先に円錐状の花序をつけ、黄白色の雄花と赤色の雌花が混在します。花は小さく、5枚のがく片がありますが、花弁はありません。

果実

果実は蒴果で、秋（9〜10月頃）に熟します。完熟前に5つに裂け、それぞれが長さ7〜10センチ[[メートル]]ほどの舟形になります。この裂片の縁に、緑色のエンドウ豆ほどの大きさの種子が1〜5個つきます。種子は球形で、最初は黄褐色、後に茶色になり、表面にはしわがあります。

冬芽

冬芽は枝の先端に頂芽を1つ、側芽を互生につけます。頂芽は大きく、ビロード状の赤茶色の毛で覆われています。葉痕は円形で大きく、維管束痕が多数見られます。

アオギリは、水をよく吸い上げ、火に強い性質を持ちます。また、生命力が強く、塩害や大気汚染にも耐えることができます。

利用

アオギリは、庭木、公園樹、街路樹として広く利用されています。特に、その耐火性から、過去の震災時には火災の延焼を防いだ例も多くあります。樹皮の繊維は丈夫で、粗布や縄の材料にもなります。幹は建材として利用されるほか、楽器や下駄の材料にもなりますが、耐久性は高くありません。種子はかつて食用とされ、太平洋戦争中にはコーヒーの代用品として利用されました。

栽培は主に挿し木で行われます。春に若枝を30センチ[[メートル]]ほどに切って植えます。

種子は梧桐子（ごどうし）という生薬として用いられ、胃痛や下痢に効果があるとされます。葉は浮腫、高血圧、コレステロールの低下などの民間薬として用いられ、初夏に採って陰干ししたものを煎じて服用します。

文化

中国の伝説では、アオギリは鳳凰が住む木とされ、閏年には13枚の葉をつけると言われています。また、古琴の材料としても知られています（アオギリかキリかは不明）。

季節感とも深く結びついており、七十二候の一つ「桐始華」や、秋の紅[[葉]]の風景を詠んだ詩にも登場します。白居易の「長恨歌」にもアオギリの葉が散る様子が描かれています。

日本では、広島の「被爆アオギリ」が有名で、爆心地から近い場所で被爆しながらも生き残り、人々に勇気を与えました。平和記念公園に移植され、その種は平和の象徴として全国に配られています。

アオギリの花言[[葉]]は「秘めた意思」「秘めた恋」です。

アオギリ属

アオギリ属（Firmiana）には、以下の種が含まれます。

Firmiana colorata
Firmiana fulgens
Firmiana hainanensis
Firmiana major
アオギリ (Firmiana simplex)

脚注

注釈

出典

参考文献

亀田龍吉『落ち葉の呼び名辞典』世界文化社、2014年10月5日、60頁。ISBN 978-4-418-14424-2。
鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『草木の種子と果実』誠文堂新光社〈ネイチャーウォッチングガイドブック〉、2012年9月28日、117頁。ISBN 978-4-416-71219-1。
鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽：四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、100頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
田中潔『知っておきたい100の木：日本の暮らしを支える樹木たち』主婦の友社〈主婦の友ベストBOOKS〉、2011年7月31日、132頁。ISBN 978-4-07-278497-6。
辻井達一『続・日本の樹木』中央公論新社〈中公新書〉、2006年2月25日、127 - 130頁。ISBN 4-12-101834-6。
馬場篤『薬草500種－栽培から効用まで』大貫茂（写真）、誠文堂新光社、1996年9月27日、9頁。ISBN 4-416-49618-4。
林将之『紅[[葉]]ハンドブック』文一総合出版、2008年9月2日。ISBN 978-4-8299-0187-8。
菱山忠三郎『樹木の冬芽図鑑』主婦の友社、1997年1月7日、124 - 125頁。ISBN 4-07-220635-0。
平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、142頁。ISBN 4-522-21557-6。
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多田多恵子『身近な草木の実とタネハンドブック』文一総合出版、2010年、35頁。ISBN 978-4-8299-1075-7。

関連項目

木の一覧
キリ、イイギリ - 大型の葉をつける高木にキリの名をつけた。
被爆アオギリ
伊古奈比咩命神社のアオギリ自生地 - 国の天然記念物。
河東碧梧桐 - アオギリにちなむ俳号。

外部リンク

Firmiana simplex (L.) W. Wight - Germplasm Resources Information Network (GRIN), Agricultural Research Service (ARS), United States Department of Agriculture (USDA).
Firmiana simplex (L.) W. Wight - Integrated Taxonomic Information System.
Firmiana platanifolia - National Center for Biotechnology Information (NCBI).
Firmiana simplex - Encyclopedia of Life.
アオギリ - 植物雑学事典, 岡山理科大学生物地球学部.
アオギリ 種子 - フラボンの山野草と高山植物の世界.
アオギリの種 - やまびこネット, 日本博物館協会.

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