キリギリス科(Tettigoniidae)について
キリギリス科は、
バッタ目キリギリス亜目に分類される
昆虫のグループです。コオロギと並び、鳴く虫として人々に親しまれています。
キリギリス、ウマオイ、クツワムシなどがこの科に属しており、草むらや樹上で生活しています。
特徴
触角: 糸状で長く伸びています。
口器: 咀嚼に適した頑丈な大顎を持っています。
聴覚器官: 前脚の脛節にあります。
脚: 3対の脚は歩行に適しており、特に後脚は跳躍のために発達しています。ただし、樹上性の種では後脚がやや短い傾向があります。雑食性の種では、獲物を捕獲するために前脚と中脚の脛節に棘状の突起があります。
翅: 左右の前翅は、閉じた際に背中で一部が重なります。コオロギとは異なり、左の前翅が上に重なります。しかし、ササキリモドキ亜科のように、翅が短く退化している種も多くいます。
尾肢: オスは腹部末端に一対の尾肢を持ち、その形状は種の同定に利用されます。
産卵管: メスは発達した産卵管を持ち、土中に産卵する種は剣型、植物の茎などに産卵する種は鎌型をしています。
活動: 昼行性または夜行性です。
食性: 植物食または雑食で、種によっては昆虫を捕食します。
発音: 左右の前翅を擦り合わせて音を出します。多くはオスが鳴きますが、ツユムシ
亜科の一部の種ではメスも鳴きます。
分布と多様性
キリギリス科は、熱帯から亜寒帯にかけて広く分布しており、8000種以上が知られています。熱帯地域には、木の葉や枯葉、コケなどに擬態した種もいます。
下位分類
キリギリス科は、以下の
亜科に分類されます。
ツユムシ亜科 (Phaneropterinae)
ツユムシ (
Phaneroptera falcata)
アシグロツユムシ (Phaneroptera nigroantennata
)
セスジツユムシ (
Ducetia japonica)
ホソクビツユムシ (Shirakisotima japonica
)
クダマキモドキ (
Holochlora japonica)
ヤマクダマキモドキ (Sinochlora longifissa
)
ササキリモドキ
亜科 (Meconematinae)
(ヒメツユムシ)など
キョジンツユムシ
亜科 (Pseudophyllinae)
キョジンツユムシ (Pseudophyllus titan
)
ヒラタツユムシ (
Phyllomimus sinicus)
クツワムシ亜科 (Mecopodinae)
クツワムシ (
Mecopoda nipponensis)
タイワンクツワムシ (Mecopoda elongata
)
ウマオイ
亜科 (Listroscelidinae)
ハヤシノウマオイ (Hexacentrus japonica
)
ハタケノウマオイ (
Hexacentrus unicolor)
クサキリ亜科 (Copiphorinae)
クサキリ (
Homorocoryphus lineosus)
クビキリギス (Euconocephalus thunbergi
)
カヤキリ (
Pseudorhynchus japonicus)
ササキリ亜科 (Conocephalinae)
ササキリ (
Conocephalus melaenus)
ウスイロササキリ (Conocephalus chinensis
)
オナガササキリ (
Conocephalus gladiatus)
ホシササキリ (Conocephalus maculatus
)
コバネササキリ (
Conocephalus laponicus)
キリギリス亜科 (Tettigoniinae)
ヤブキリ (
Tettigonia orientalis)
キリギリス (Gampsocleis buergeri
)
ヒメギス (
Metrioptera engelhardti)
コバネヒメギス (Chizuella bonneti
)
ツシマフトギス (
Paratlanticus tsushimensis)
Ephippiger ephippiger (saddle-backed bush cricket)
近年の分類
近年の図鑑では、これらの亜科を科として扱い、キリギリス科全体をキリギリス上科とする分類も提唱されています。
ギャラリー
(画像は省略)
関連項目
キリギリス
参考文献
小林正明『秋に鳴く虫』信濃毎日新聞社、1990年、ISBN 4-7840-9005-3。
松浦一郎『虫はなぜ鳴く - 虫の音の科学』正木進三監修、
文一総合出版、1990年、ISBN 4-8299-3030-6。
蒲谷鶴彦録音、栗林慧写真『声の図鑑 虫しぐれ』山と溪谷社、1994年、ISBN 4-635-59105-0。
外部リンク
Orthoptera Species File Online: family Tettigoniidae Krauss, 1902 (英語)