キリスト教圏の七勇士

キリスト教圏の七勇士とは、聖ジョージ、聖アンドリュー、聖パトリック、聖デニス、聖ジェームス、聖アンソニー、聖デイヴィッドらを指す総称であり、それぞれイングランド、スコットランド、アイルランド、フランス、スペイン、ポルトガル、ウェールズの守護聖人として知られています。

これらの勇士たちは、キリスト教芸術や民間伝承において英雄的な戦士として描かれており、特にリチャード・ジョンソンが1596年に著した『キリスト教圏の七勇士の有名な歴史』によってその名が広く知られるようになりました。この書籍は、彼ら7人をまとめて物語る形式を確立し、それぞれの勇士に添え名を付与し、ジョンソン独自の解釈による冒険譚を創造しました。ジョンソンの著作は、後にウィリアム・ヘンリー・ジャイルズ・キングストンによって現代英語に書き直され、より多くの読者に親しまれることとなりました。

伝説においては、聖ジェームスがムーア人との戦いであるクラビホの戦いに神によって遣わされる様子が描かれたり、聖ジョージが竜を退治する騎士として語られたりします。また、聖パトリックがアイルランドから全ての蛇を追い払ったという伝説も広く知られています。これらの個々の物語は、中世ヨーロッパにおいて人気を博していましたが、ジョンソンによって初めて一つの物語としてまとめられました。

七勇士のうち、聖アンドリュー、聖ジョージ、聖ジェームス、聖デニスの4名は殉教者として亡くなっています。ジョンソンは、他の3名も殉教者であるという設定を与え、聖ジョージと聖ジェームス以外の勇士たちも遍歴の騎士であるというアイデアを生み出しました。

これらの伝説は、ヨーロッパ各地の文化や歴史に深く根ざしており、キリスト教的な価値観や騎士道精神を象徴するものとして、今日まで語り継がれています。リチャード・ジョンソンの『キリスト教圏の七勇士の有名な歴史』は、これらの英雄たちの物語を一つにまとめ、新たな解釈を加えることで、後の時代における文学や芸術に大きな影響を与えました。ジョンソンの作品は、単なる英雄譚としてだけでなく、当時の社会や文化、宗教観を反映した貴重な資料としても評価されています。

参考文献
Compton's Encyclopaedia: 21 (S-Sousa).
Encyclopædia Britannica Concise: Anthony of Padua, Saint
前原, 澄子「17世紀ロンドンの大衆劇場における騎士道ロマンス―道化によるバーレスクの意味―」『Mukogawa Literary Review』第51巻、武庫川女子大学、2014年3月、1-11頁、doi:10.14993/00002018、ISSN 1340-9441

外部リンク
The Seven Champions of Christendom (1861) - インターネット・アーカイブ - リチャード・ジョンソン版
The Seven Champions of Christendom (1861) - インターネット・アーカイブ - ウィリアム・ヘンリー・ジャイルズ・キングストン版
The Seven Champions of Christendom - プロジェクト・グーテンベルク
* The Seven Champions of Christendom (1913) - インターネット・アーカイブ - フレデリック・ジョセフ・ハーヴェイ・ダートンによる編集版

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