キルギスのメディア

キルギスのメディア：自由と規制のはざまで

キルギス共和国では、中央アジア諸国と比較してメディアの自由度が高いとされています。キルギス憲法は報道の自由を保障し、検閲を禁じていますが、現実には政府による一定の規制がメディアにかかっています。欧州安全保障協力機構（OSCE）は、キルギスの印刷メディアとオンラインメディアの倫理水準に関する報告書を発表しており、その現状を詳細に分析しています。

ソ連崩壊後のメディア状況

1991年のソビエト連邦崩壊後、キルギスは独立を迎えました。当時存在していた50紙ほどの新聞やテレビ・ラジオ放送局は全て国営で、共産党の支配下にありました。しかし、その後民間放送局が登場し、ビシュケクのピラミダテレビやオシのオシTV、ビシュケクのアルマズラジオなどが先駆けとなりました。

1990年代後半には、政府によるメディアへの圧力が強まり、多くのメディアがアスカル・アカエフ大統領（在任：1990年-2005年）の親族の支配下に置かれることになりました。

新聞・雑誌

2003年時点では、キルギスには25～30ほどの新聞と雑誌がありました。そのうち8紙・誌は政府が所有しており、国立印刷所ウチクンが国内最大の新聞発行者でした。

テレビ・ラジオ

メディア間の競争は、政府から厚い支援を受ける政府支持の新聞や放送局によって歪められていました。2000年代初頭にはメディアの数が増加しましたが、多くの新規事業は政府とつながりのある人物によって支配されていました。現在、キルギスには国営8局、民間20局のテレビ放送ネットワークが存在しますが、政府による放送への制限は依然として存在します。過去には、反政府的な内容を放送した民間放送局NTSが閉局に追い込まれるなど、メディアへの圧力は顕著でした。FM放送局は23局、AM放送局は13局あります。

国営メディアは支配的な地位を占めており、野党による民営化の動きは、クルマンベク・バキエフ大統領（在任：2005年-2010年）によって阻まれてきました。放送の到達範囲は限られており、特にキルギス南部ではその傾向が顕著です。民間放送ネットワークの多くは首都ビシュケクに拠点を置いています。2004年時点では、人口千人あたりのテレビ受像機普及台数は187.6台でしたが、ラジオについては統計がありません。

ニュースメディアは、報道できる内容に制約を受け、政府批判は稀です。過去には、政府が運営するキルギス共和国公共テレビ・ラジオ放送協会（КТРК）の会長職を大統領が兼任しようとした際に、政府支持派・反政府派を問わずこれに抗議したジャーナリストたちが嫌がらせを受け、萎縮させられた事例がありました。通信社は国営・民間を問わず、キルギス語、ロシア語、英語でニュースを配信しています。名誉毀損は違法行為ですが、その適用は不公平な場合があります。

2005年の政変後、政府に反対する意見がメディアに露出する機会は増加しましたが、反対勢力側の代弁者がマスコミに登場する機会は依然として限られています。反政府姿勢で知られていたテレビ局センティヤブル（Sentyabr：「9月」の意）は、裁判所から廃局を命じられました。政変後大統領代行となったクルマンベク・バキエフは、反汚職政策の一環として国営テレビ・ラジオ放送協会を公共放送へと再編し、2007年にキルギス共和国公共テレビ・ラジオ放送協会が新たに発足しました。

インターネット

キルギスは中央アジア諸国の中で、インターネット利用が比較的自由な国とされています。2006年時点では、定期的にインターネットを利用する人は国民の5％に相当する約29万8100人でしたが、政治的主題を取り扱うブログやフォーラム、インターネットニュースなどが活発に展開されていました。しかし、この時点ではインターネットはキルギス社会に大きな影響を与えていないと見なされていました。

しかし、2010年には携帯電話の普及が大きく進み、4月にはキルギス語のTwitterが提供されるなど、モバイル対応のSNSの普及が急速に進みました。2010年キルギス騒乱では、インターネット上の情報が反政府運動を支える要因の一つとなり、SNSと携帯電話による情報拡散が政変に繋がったことから、「アラブの春」の先駆けとなった事例とも言われています。

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