キルクーク油田

キルクーク油田

キルクーク油田は、イラク北部に位置する重要な油田です。その歴史は20世紀初頭に遡り、1927年にキルクーク近郊のババ・グルグルで発見されました。1934年からは、イギリス系のイラク石油会社によって採掘が開始され、イラクの石油産業を支える基盤となりました。

概要

キルクーク油田の可採埋蔵量は約250億バレルと推定されており、その半分以上がすでに採掘されています。しかし、21世紀に入ってからも採掘は継続されており、その規模の大きさを物語っています。この油田はザグロス褶曲帯に位置し、第三紀の石灰岩が主要な貯油層となっています。

歴史

キルクーク油田は、その発見以来、イラクの政治と経済に深く関わってきました。イギリスのイラク王国間接統治時代から、イラクの資源ナショナリズムの高まりの中で、常に注目を集めてきました。1979年には産出量がピークを迎え、1日に142万バレルに達し、トルコやシリアを経由してパイプラインで輸出されていました（キルクーク・ジェイハン石油パイプライン、キルクーク・バニヤース石油パイプライン）。

しかし、その後はイラン・イラク戦争、湾岸戦争、イラク戦争などの影響を受け、経済制裁も重なり、産出量は低迷しました。イラク戦争終結後には、再び輸出量を増大させる計画が立てられましたが、クルド人自治との関連で、油田の帰属と石油収入の配分が問題となっています。

キルクーク油田周辺は伝統的にクルド人が多い地域でしたが、サダム・フセイン政権下ではアラブ人の移住が推進されました。そのため、この地域をクルディスタン地域に組み込もうとするクルド人と、それに反対するアラブ人の間で争いが起こっています。

2014年6月には、イラクとシャームのイスラーム国（ISIL）がイラク北部の中心都市モースルを制圧した際、クルディスタン地域自治政府がキルクークを制圧しました。2017年10月18日には、イラク軍が油田を含むキルクークの奪回を発表し、2018年1月には、イラク中央政府の石油大臣が、イラク内戦や対ISIL戦で影響力を強めた隣国イランに対して、キルクーク産原油を輸出することを表明しました。

現状と課題

キルクーク油田は、イラクの石油生産において依然として重要な役割を果たしていますが、その帰属と資源配分をめぐる問題は、依然として解決されていません。クルド人、アラブ人、トルクメン人など、多様な民族が暮らすこの地域において、資源を公平に分配し、安定した社会を築くことが、今後の課題となっています。

外部リンク

* 石油大国イラク復権への道筋 - 西村昇平 独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構

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