キルクーク県

キルクーク県は、イラク北部に位置する県であり、その中心都市は県と同名のキルクーク市です。この地域は、約125万人の人々が暮らす、多様な文化が交錯する場所として知られています。地理的には、北をアルビール県、東をスレイマニヤ県、南西をサラーフッディーン県と接しており、重要な地理的要衝となっています。

キルクーク県の最も重要な特徴の一つは、その豊富な石油と天然ガス資源です。特に、キルクーク油田はイラク経済において非常に重要な役割を果たしており、この地域の経済的・政治的な重要性を高めています。

歴史的に見ると、キルクーク県は、1976年から2006年までの間、「タミーム県」という名称で知られていました。この地域はもともとクルド人が多数を占めていましたが、20世紀初頭にキルクーク油田が発見されて以降、アラブ人など他の民族の移住が進みました。特に、フセイン政権下では、クルド人の追放とアラブ人の入植を奨励する「アラブ化政策」が実施され、この地域の民族構成は大きく変化しました。

2003年のイラク戦争では、サダム政権崩壊後、クルド人武装組織ペシュメルガが米軍と連携してキルクーク県を制圧しました。その後、2014年にはISIL（イスラム国）がイラク北部で勢力を拡大すると、イラク政府軍が撤退。その結果、ペシュメルガがキルクーク州を防衛し、クルディスタン自治政府（KRG）がこの地域を実効支配するようになりました。キルクーク県は、イラク政府が公式に認めているクルディスタン地域の一部ではありませんが、2017年9月にはクルディスタン地域の独立を問う住民投票が実施されました。KRG側は「独立賛成が9割を超えた」と主張していますが、イラク政府はキルクーク県の明け渡しを要求し、依然として緊張状態が続いています。

地元新聞『ハワル』の推計によると、2017年時点の民族構成はクルド人が5割強、アラブ人が2割強、トルクメン人が2割弱となっており、この地域の民族的多様性が伺えます。キルクーク県は、その歴史的背景と多様な民族構成から、イラク国内だけでなく国際社会においても注目される地域であり、今後の動向が注視されています。

関連情報として、イラクの地方行政区画についての情報を参照すると、キルクーク県の位置づけや行政構造についてより深く理解することができます。

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