キルデリク3世 (フランク王)

キルデリク3世：メロヴィング朝最後の国王

キルデリク3世（Childeric III, 714年頃または717年頃 - 754年頃）は、メロヴィング朝の最後の国王（第14代、在位：743年 - 751年）です。フランス語ではシルデリク（Childéric）とも呼ばれます。彼はキルペリク2世の息子とされています。

父系に関する謎

キルデリク3世の父親については、先代の国王テウデリク4世であるという説も存在します。しかし、テウデリク4世は711年または712年生まれと考えられており、キルデリク3世との年齢差が3〜6歳程度となるため、父子関係は非常に疑わしいとされています。そのため、キルペリク2世が父親であるというのが通説です。キルデリク3世がメロヴィング王家の一族であることは確実ですが、血統が明確ではないという説も存在し、系譜関係は必ずしも明確ではありません。メロヴィング王家には、クローヴィス3世やクロタール4世のように、血統が疑問視される人物や、系譜が特定できない人物も存在します。

生涯

先代のテウデリク4世が737年に死去した後、王位は空白となっていました。743年初頭、宮宰のカールマンとピピン3世の兄弟によって、キルデリク3世は王位に就けられます。しかし、実権は宮宰であるピピン3世が握っていました。751年、ピピン3世はサン＝ドニ修道院長のフルラッドを教皇ザカリアスの元へ派遣し、「権力のない者を王としておくより、権力のある者を王とした方が良い」という回答を得ます。この教皇の回答を受けて、同年11月、ピピン3世はフランク族の貴族たちによってフランク王に選出され、司教ボニファティウスから塗油を受けて正式に王位につきました。キルデリク3世は廃位され、髪を剃られてサン＝ベルタン修道院に幽閉されました。彼の息子であるテウデリクもサン＝ヴァンドリーユ修道院に幽閉され、歴史の表舞台から姿を消し、メロヴィング朝はここに断絶することとなりました。

家族構成

キルデリク3世の妻はランのギゼラ（723年頃生誕）であり、息子はテウデリク（740年頃 - 没年不明）です。ランのギゼラの父は、ランのカリベルトで、彼はキルデリク3世の大叔父テウデリク3世とその王妃クロティルダ（ピピン1世の孫娘）の娘ベルトラダの息子です。このため、キルデリク3世夫妻は、ピピン家（カロリング朝の前身）の血を引く遠縁の親族同士でした。また、ランのギゼラの祖先には、西ゴート王のキンティラとその父トゥルガ、西ローマ帝国の独裁者リキメルとその妻で西ローマ皇帝アンテミウスの娘アリュピア、アリュピアの母方の祖父で東ローマ皇帝マルキアヌス、アンテミウスの先祖でローマ皇帝フラウィウス・クラウディウス・ユリアヌスの親類プロコピウス（母方の従兄。ユリアヌスの母バシリナがプロコピウスの母と姉妹）など、ローマ帝国末期を代表する人物が名を連ねています。

まとめ

キルデリク3世は、メロヴィング朝の最後の国王であり、その治世は実質的に宮宰ピピン3世によって支配されていました。彼の廃位とメロヴィング朝の断絶は、その後のフランク王国の歴史に大きな転換点をもたらしました。彼の生涯と家族構成は、当時の政治情勢と血縁関係の複雑さを物語っています。

参考文献

柴田三千雄 他 『世界歴史大系　フランス史1』、山川出版社、1995年
レジーヌ・ル・ジャン 『メロヴィング朝』 白水社、2009年
瀬原義生 『ドイツ中世前期の歴史像』 文理閣、2012年

関連項目

フランク王の一覧

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