キ90 (航空機)

キ90爆撃機について

キ90は、大日本帝国陸軍が取り組んだ爆撃機計画の一つであり、主に三菱重工業によって開発が進められました。この機体は、四式重爆撃機の後継を目指して設計されたもので、その試作命令は1943年7月9日に発出されました。陸軍が求めた性能は多岐にわたり、常用高度が4,000メートルから10,000メートルの範囲での運用が可能であること、行動半径が1,500キロメートル以上で、余裕を持って2時間の飛行ができることが求められました。この他にも、武装として20mm機関砲2門、13mm機関砲2〜3門を搭載し、最大1,000キログラムの爆弾を積載できる能力が必要とされました。また、魚雷の搭載に関する研究も行われました。

さらには、高高度での水平爆撃のほかに、急降下爆撃に関しても対応できることが求められ、設計に際してはドイツから輸入されたJu 88A-4が基準とされました。エンジンには、三菱製の「ハ214ル」空冷複列星型18気筒エンジン（出力2,500馬力）を使用する計画があり、乗員は4名が機首キャビンに集中配置されることになっていました。

しかし、1945年5月には太平洋戦争の局面が悪化したことを受けて、最終的な審査が1946年3月に予定されていたにもかかわらず、試作機の整理統合が行われ、キ90の計画は設計段階で中止されてしまいました。

Ju 90改設計機

一方で、陸軍は別の計画として、九二式重爆撃機の後継機に関する計画を1938年には立ち上げており、その開発名に「キ90」を仮称として与えました。具体的には、Ju 90の爆撃機型を日独共同で改設計し、ユンカース社で10機生産、そして日本に空輸する計画が検討されました。この計画の進展においては、陸軍と三菱からなる日本側の改設計チームが担当し、ユンカース社との交渉は三菱が行うことになりました。

1938年7月25日、ユンカース社の工場で交渉が開始されましたが、国際情勢の悪化によりユンカース社は輸出向けの機体開発が難しくなり、同年9月に示された一般図が最後の反応となりました。そのため、この計画も最終的には断念せざるを得ませんでした。

その後、三菱はJu 90の代替としてFw 200の改設計による爆撃機化を模索し、フォッケウルフ社は前向きに応じていました。陸軍も興味を示し、Fw 200の試作1号機が1938年11月に日本を訪問することとなりましたが、第二次世界大戦が勃発すると、引渡しが実現されないまま計画は頓挫しました。

さらに、三菱はボーイング社との間で遠距離爆撃機の共同設計を検討しましたが、日米関係の悪化によりこの計画も進展することはありませんでした。

参考文献

• - 歴史群像編集部 編『決定版 日本の陸軍機』学研パブリッシング、2011年
• - 秋本実『日本陸軍試作機大鑑』酣燈社、2008年
• - 佐原晃『日本陸軍の試作・計画機 1943〜1945』イカロス出版、2006年
• - 秋本実『巨人機物語 知られざる日本の空中要塞』光人社、2002年

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