ギガビット・イーサネット

ギガビットイーサネット（GbE）とは

ギガビットイーサネット（Gigabit Ethernet, GbE）は、1ギガビット毎秒（1Gbps）の最大通信速度を持つイーサネット規格です。1GbEとも表記され、長年にわたり個人利用の標準的なネットワーク速度でした。しかし、近年では2.5Gbpsや5Gbpsのマルチギガビットイーサネット、10Gbpsの10ギガビットイーサネットが低価格化し、LAN速度が大幅に向上する傾向にあります。

歴史

GbEは100メガビットイーサネットの後継として開発されました。1998年にIEEE 802.3zとして標準化され、光ファイバ規格（1000BASE-SX, 1000BASE-LX）と短距離銅線ケーブル規格（1000BASE-CX）が登場しました。光ファイバは企業の基幹ネットワークでよく使用されます。1999年には、UTPケーブルを使用する1000BASE-Tが登場し、家庭用有線LANの主流となりました。

2004年には、IEEE 802.3ah（EFM: Ethernet in the First Mile）が標準化され、加入者線接続での利用が意図されました。これにより、FTTH（光回線）が普及し、光インターネット接続の主流となりました。

GbEは半二重通信とCSMA/CD|CSMA_CDをサポートした最後のイーサネット規格ですが、実際には全二重通信が主流です。

規格の種類

GbEには様々な物理層規格があり、いずれも1Gbpsのスループットを実現します。

1000BASE-X 規格は、8b/10b符号化方式を採用し、クロック同期を容易にしています。
ほぼ全ての規格でオートネゴシエーション（機器間の自動認識）がサポートされています。ツイストペアケーブル規格では、1000BASE-Tは旧規格との接続互換性があります。ただし、光ファイバ規格では、異なる通信速度の機器との接続はできません。

1000BASE-T

1999年にIEEE 802.3abとして標準化され、現在最も普及している規格です。カテゴリ5以上のツイストペアケーブルを使い、最長100mの接続が可能です。既設の100BASE-TXとの互換性が高いため、家庭用にも広く普及しました。4対8線のより対線を使用し、各ペアに250Mbpsのデータレートを持たせることで1Gbpsを実現しています。ハイブリッド回路でエコーをキャンセルし、全二重通信を実現しています。PAM5変調を用いて周波数を低く抑え、8B1Q4方式でエラー検出も行います。

オートネゴシエーションが必須で、接続時に通信速度などを自動認識します。Auto MDI/MDI-X機能も搭載されており、クロスケーブルが不要です。

1000BASE-TX

2001年にTIA/EIA-854として標準化。カテゴリ6以上のUTPケーブルを使用し、送受信専用に2対ずつ使用して1Gbpsを実現します。1000BASE-Tよりも高周波数の信号を使うため、対応ケーブルが必要でしたが、1000BASE-Tの普及により製品化されることはほとんどありませんでした。

1000BASE-T1

2016年にIEEE 802.3bpとして標準化。車載向けに開発され、1対2線のツイストペアケーブルを使用します。PoDL（Power over Data Lines）に対応し、給電も可能です。PAM3変調を使い、1Gbpsのデータレートを達成しています。

1000BASE-CX

1998年にIEEE 802.3zとして標準化。平衡接続した銅線ケーブルを使用し、最長25mの接続が可能ですが、あまり普及しませんでした。

1000BASE-SX

1998年にIEEE 802.3zとして標準化。マルチモードファイバ（MMF）を使用し、最長550mの接続が可能です。航空機の緊急時通信などに活用されています。

1000BASE-LX

1998年にIEEE 802.3zとして標準化。マルチモードファイバで最長550m、シングルモードファイバ（SMF）で最長5kmの接続が可能です。

1000BASE-LX10

2004年にIEEE 802.3ahとして標準化。1000BASE-LXと同様の方式で、伝送距離10kmに対応します。EFM（加入者線接続）での利用を意図した規格です。

1000BASE-EX, 1000BASE-LH, 1000BASE-LHA, 1000BASE-LHB, 1000BASE-ZX

ベンダ独自の拡張規格で、より長距離の接続に対応しています。それぞれ伝送距離が異なり、互換性は保証されません。

1000BASE-BX10

2004年にIEEE 802.3ahとして標準化。1芯のシングルモード光ファイバで、異なる波長を使って双方向通信を実現します。

1000BASE-PX

2004年にIEEE 802.3ahとして標準化。1G-EPON（Ethernet Passive Optical Network）とも呼ばれ、主にFTTHで用いられます。複数の加入者線を光受動素子で束ねてプロバイダ設備へ接続する方式です。

1000BASE-RH

2017年にIEEE 802.3bvとして標準化。プラスチック光ファイバ（GEPOF）を使用し、主に車載向けに開発されました。PAM-16変調を用いて1Gbpsのデータレートを実現しています。

まとめ

ギガビットイーサネットは、その多様な規格と歴史を通じて、現代のネットワーク基盤を支えています。高速化が進む中、GbEの知識はより高度なネットワーク技術を理解する上で不可欠です。

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