ギプス

ギプスの概要と重要性

ギプス（ドイツ語: Gips、英語: cast）は、骨折や靭帯損傷の治療において重要な役割を持つ固定具です。これは、患部を外から固定し保護するために使用され、安静を保つために必要不可欠なアイテムとして整形外科で広く用いられています。その重要性から、「ギプスなき所に整形外科はない」とも言われることからも分かるように、整形外科において欠かせない存在と言えます。

ギプスの構成と特性

ギプスは、焼石膏粉末と綿布を組み合わせたものであり、水と反応させることで固化します。この過程で得られる性質を利用して、患部をしっかりと固定することができます。しかし、ギプスは安価であるものの、重いことや完全に乾燥させるのに時間がかかる、X線を通しにくいといった欠点も抱えています。そのため、最近では水硬性樹脂を含むガラス繊維製のギプスが主流になりつつあります。

歴史的背景

ギプスの名称はオランダ語の「Gips」に由来しており、日本で使われる「ギブス」は誤りです。ギプスの使用は1860年代のイギリス・オランダ戦争まで遡ります。当時、オランダの軍医アントニウス・マタイセンが戦場での負傷者を早急に救護するために、石膏を用いて素早く骨折部位を固定する方法を考案しました。このアイデアは、その後多くの国で改良され、より効率的な処置が可能になりました。

日本では、尾澤豊太郞が初めてギプスの製造に成功し、1955年には国産初の石膏ギプスが市場に登場しました。それ以降、医療技術の発展と共にガラス繊維製のギプスが主流となり、石膏ギプスは義肢装具の制作に限られることが多くなっています。

ギプスの使用と装着方法

ギプスは主に骨折や脱臼の治療時に用いられますが、軟部組織の損傷や拘縮の防止、さらには義肢装具の型取りにも利用されます。装着にあたっては、まず患部を確認し、皮膚に傷がないかをチェックします。次に、固定部の位置が適切であるか確認し、圧迫による刺激を避けるためにパッドを当てます。

医師が助手のサポートを受けながらギプスを巻き付け、必要に応じて麻酔や鎮静剤を用いることもあります。ギプスは凝固させながら慎重に巻き、乾燥後に医師によるX線撮影で整復位置を確認します。ガラス繊維製ギプスは約30分で硬化しますが、石膏ギプスは48時間かかることが多く、その間は注意が必要です。

注意点とリハビリ

ギプスの長期使用は筋肉の萎縮や関節の拘縮を引き起こす可能性があるため、装着期間は必要最低限にすることが望ましいことを覚えておく必要があります。特にを、近年ではより迅速な治療を目指し、ギプスを使わずに内固定や外固定法を組み合わせる傾向が高まっています。

また、ギプス装着中は皮膚が蒸れやすく、かゆみが生じることが多いです。ギプスの外側からかくことは推奨されないため、清涼剤のスプレーを使用することが有効とされています。

ギプスの除去と分類

ギプスを取り外す際は、専用のギプスカッターを使います。この装置は振動を利用して硬い素材をカットするため、皮膚などを傷つけることはありません。また、最近では超音波を用いるタイプも登場し、より安全に取り除けるようになっています。

ギプスにはいくつかのタイプがあり、硬化材や基布の材質、形状によって分類されます。用途に応じた様々なギプスが医療現場で活用されており、患者の状態や必要に応じた適切な選択が求められます。

まとめ

ギプスは整形外科において非常に重要な固定具であり、その発展の歴史は長いものがあります。適切な使用法を理解し、最新の技術を取り入れることで、より良い治療を提供することが可能となります。

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