ギヤ・ブルーズ

thee michelle gun elephant『ギヤ・ブルーズ』：深く潜る、ブルージーなロックの深淵

1998年11月25日、日本のロックシーンに新たな金字塔が打ち立てられた。thee michelle gun elephant（以下、TMGE）の4thアルバム『ギヤ・ブルーズ』である。前作から約1年ぶりとなる本作は、彼らの音楽性をより深く、より濃密に表現した、まさに集大成と言える作品だ。全16曲に渡る楽曲群は、ブルースを基調としながらも、TMGE特有のヘヴィでスリリングなサウンド、そして時に繊細でメロウなメロディーが織り交ぜられ、リスナーを圧倒的な世界へと誘う。

アルバムの構成と魅力

アルバムは、パワフルなロックナンバーから、静謐で叙情的なインストゥルメンタルまで、多彩な楽曲が並んでいる。オープニングを飾る「ウエスト・キャバレー・ドライブ」からして、その重厚なサウンドは聴く者の心を掴んで離さない。続く「スモーキン・ビリー」はシングルカットされた彼らの代表曲の一つであり、アルバム全体を象徴するような、力強い演奏が印象的だ。

特筆すべきはインストゥルメンタル楽曲だ。「サタニック・ブン・ブン・ヘッド」は、曲の途中でがらりと変化する展開が聴きどころ。チバユウスケによるタイトルの連呼が不気味な雰囲気を醸し出すが、メンバーはインタビューで「声も楽器の一部」と発言しており、単なるインスト曲の枠を超えた表現と言えるだろう。「ホテル・ブロンコ」もインストながら、曲中に挿入された「サノバビッチ」という叫び声が、独特の緊張感と混沌を生み出している。これらのインスト曲の存在は、アルバム全体に緊張感と奥行きを与えている。

一方、「フリー・デビル・ジャム」では、クハラカズユキがボーカルパートに参加。メンバーそれぞれの個性を際立たせる試みは、TMGEの音楽における実験性と柔軟性を示すものとなっている。

シングル曲とアルバムバージョン

8thシングル「G.W.D.」は、アルバムバージョンで収録されている。ロンドン録音のシングルバージョンとは異なり、アルバムバージョンは東京で再録音されたものであり、「東京バージョン」と呼ばれることもある。シングルバージョンがベースリフから始まるのに対し、アルバムバージョンは叫び声から始まるという、異なるイントロが聴き比べの楽しみを与えてくれる。

アルバムには収録されていないものの、9thシングル「アウト・ブルーズ」の存在も忘れてはならない。この曲は、アルバムとはまた違った魅力を持つ、彼らの音楽世界の一端を垣間見れる重要な作品だ。海外盤にはボーナス・トラックとして「ジェニー」が追加されている点も興味深い。

ライブで人気の楽曲とアナログ盤

「ダニー・ゴー」は、ライブでの演奏機会が多く、アンコールで披露されることも多かった、ファン人気も高い楽曲だ。TMGEのライブにおける熱狂的な雰囲気を伝える、代表的な一曲と言えるだろう。アナログ盤では、この曲のアウトロが追加されており、ベストアルバム『THEE GREATEST HITS』にはこのバージョンが収録されている。

『ギヤ・ブルーズ』は、単なるロックアルバムではない。ブルースを土台としながらも、TMGEの個性と実験性が凝縮された、唯一無二の作品である。彼らの音楽を深く理解するためには、ぜひともこのアルバムを聴いて、その世界観に浸ってほしい。1曲1曲に込められた彼らの情熱と、時代を超えて色褪せないサウンドは、今もなお多くのリスナーを魅了し続けている。

もう一度検索