ギョイコウ

御衣黄（ギョイコウ）：緑色の桜の謎に迫る

御衣黄（ギョイコウ）は、その名の通り、緑色の花を咲かせるサクラとして知られています。バラ科サクラ属に属し、オオシマザクラを起源とするサトザクラ群の栽培品種です。江戸時代中期から記録が残っており、貴族の衣装の色に由来する「御衣黄」という雅な名前が付けられました。「御祓（ミソギ）」という別名も持ちます。

京都仁和寺から全国へ

ギョイコウは、江戸時代の京都・仁和寺で栽培が始まったとされています。その後、荒川堤などでも栽培されるようになり、シーボルトが標本を持ち帰った記録も残っています。現在では、沖縄県を除く日本各地で、100ヶ所以上もの場所で観賞することができます。かつては秋田県東由利町の町花にも指定されていました。

緑色の秘密：カロテノイドとクロロフィル

ギョイコウ最大の特徴は、その緑色の花です。ウコン、スマウラフゲンゾウ、園里黄桜、園里緑龍など、数少ない緑色の花を咲かせるサクラの一つです。この緑色は、花弁に含まれるカロテノイドとクロロフィルによるものです。ウコンも同様の成分を含みますが、ギョイコウはクロロフィル含有量が多く、より濃い緑色に見えると考えられています。DNA解析の結果、枝変わりである可能性も指摘されています。

花の色の変化と特徴

ギョイコウの花は、八重咲きで、花弁数は10～15枚程度。花弁は肉厚で、外側に反り返る傾向があります。色は場所や時期によって変化に富み、白色から淡緑色まで様々です。開花当初は目立ちませんが、中心部にある赤い条線は次第に赤みを増し、散る頃には鮮やかな紅色に変化します。また、濃緑色の部分の裏側には、ウコンにはない気孔が存在するという特徴も持っています。花の大きさも場所によって異なり、直径2～4.5cmと幅があります。

理化学研究所による品種改良

理化学研究所は、2007年にギョイコウに重イオンビームを照射する実験を行い、開花時には淡黄緑白色、散る頃には淡黄ピンク色となる新品種「仁科蔵王」を開発しました。サクラへの重イオンビーム照射による品種改良は、世界初の試みでした。同研究所は、他にもケイオウザクラから「仁科乙女」、シュンゲッカから「仁科春果」と「仁科小町」といった新品種を開発しています。

ギョイコウと近縁の桜

ギョイコウと性質の近い桜として、黄色の花を咲かせるウコンが挙げられます。また、花弁数がはるかに多いスマウラフゲンゾウも、ギョイコウと共通点を持つ桜です。これらの桜と比較することで、ギョイコウの特性をより深く理解することができます。

御衣黄を鑑賞しよう

緑色の花を咲かせ、花色の変化も楽しめる珍しいサクラ、御衣黄。その独特な美しさは、多くの人を魅了します。開花時期は4月下旬頃。全国各地の公園や庭園などで、その美しい姿を観賞することができます。各地の開花情報を確認して、春の訪れを告げる緑色の桜に出会ってみてはいかがでしょうか？

もう一度検索