ギヨーム・クリトン

ギヨーム・クリトンとは

ギヨーム・クリトン（Guillaume Cliton）、またはギヨーム・ド・ノルマンディー（Guillaume de Normandie）は、12世紀初頭に生きたフランドル伯であり、ノルマンディー公位とイングランド王位の有力な請求者でした。英語ではウィリアム・クリトー（William Clito）として知られています。彼の添え名である「クリトン（Cliton）」は、古英語の「アシリング（Aetheling）」やゲルマン語の「アデリヌス（Adelinus）」に由来し、「王族の男」や「プリンス」を意味します。

生涯

幼年時代

1102年、ギヨームはノルマンディー公ロベール2世とシビッラ・ディ・コンヴェルサーノの間に生まれました。母シビッラは、シチリア王国のノルマン貴族の娘でした。1106年、父ロベール2世がタンシュブレーの戦いで叔父ヘンリー1世に敗北し捕らえられた後、ギヨームは幼くして叔父ヘンリー1世と対面することになります。ヘンリー1世は、甥ギヨームの親権をアルク伯エリアス・ド・サン・サーンスに委ねました。エリアスはロベール2世の庶出の娘を妻としていた人物です。ギヨームは姉と共にエリアスの元で養育されましたが、1110年、ヘンリー1世が突然ギヨームを引き渡すように要求します。しかし、エリアスはギヨームを隠し、密かに自身の元へ逃がしました。これが、ギヨームの波乱に満ちた人生の幕開けとなります。

最初のノルマン反乱

ギヨームは、ヘンリー1世の敵対者であるシュルーズベリー伯ロベール・ド・ベレームの元へ逃亡し、その後フランドル伯ボードゥアン7世の宮廷へと移ります。1118年、ヘンリー1世に不満を抱くノルマンディーの伯爵や男爵たちが、ボードゥアン7世と同盟を結び、ギヨーム・クリトンを擁立して反乱を起こしました。彼らはノルマンディーの大部分を占領しましたが、同年9月のアルク包囲戦でボードゥアン7世が重傷を負い、反乱は頓挫します。しかし、翌年にはフランス王ルイ6世がギヨーム側につき、ヘンリー1世と対立します。1119年8月20日、ブレミュールの戦いでフランス軍はヘンリー1世軍に敗北し、ギヨームは辛うじて拘束を免れました。この戦いでギヨームが失った馬は、ヘンリー1世の息子ウィリアム・アデリンによって、必要な物資と共に送り返されています。

2度目のノルマン反乱

1120年11月25日、ヘンリー1世の跡継ぎであるウィリアム・アデリンが遭難死すると、ギヨーム・クリトンはイングランドとノルマンディーの明らかな相続人となりました。ノルマン貴族の一部がギヨーム側につき、ヘンリー1世の立場は更に悪化します。アンジュー伯フルク5世は、娘シビーユをギヨームと結婚させ、持参金としてメーヌ伯領を与えましたが、教会法により1124年8月に結婚は無効となりました。同時期にノルマンディーでギヨームを支持する貴族の反乱が起こりましたが、ヘンリー1世の情報網と指導者の欠如により、反乱は失敗に終わりました。

フランドル伯

1127年、ルイ6世はギヨームを支援し、フランス領ヴェクサンを彼に与え、さらに王妃アデル・ド・サヴォワの異父妹ジョヴァンナ・デル・モンフェラートと結婚させます。同年3月、フランドル伯シャルルが暗殺されると、ルイ6世はギヨームをフランドル伯に擁立する機会を得ました。ルイ6世は軍を率いてフランドルに入り、3月30日にはギヨームを新たな伯爵として受け入れるよう男爵たちを味方につけました。ギヨームは一時的に伯領の大部分を掌握しましたが、イングランドからの資金援助やティエリー・ダルザスの出現により、立場は悪化します。

1128年2月にはサントメールとヘント、3月にはブルッヘがギヨームに反旗を翻しました。5月にはリールがティエリーを迎え入れ、ギヨームの支配領域はフランドルの南の国境地帯のみとなりました。しかし、ギヨームはブルッヘに攻め込み、6月21日のアクスポールの戦いでティエリーを破りました。ブラバント公ジョフロワもギヨーム側につきましたが、7月12日にアールストを包囲中にギヨームは負傷し、その傷が原因で1128年7月28日に亡くなりました。ギヨームの遺体はサントメールのサン・ベルタン修道院に埋葬され、彼には子供がなく、父ロベールは6年後に幽閉先で亡くなりました。

ギヨーム・クリトンは、その短い生涯の中で、常に権力闘争の渦中に身を置き、激動の時代を駆け抜けた人物でした。

もう一度検索