ギラファノコギリクワガタ

ギラファノコギリクワガタ（Prosopocoilus giraffa）

ギラファノコギリクワガタは、クワガタムシ科ノコギリクワガタ属に分類される昆虫の一種で、東南アジアに広く分布しています。その最大の特徴は、キリンのように長く伸びた大顎であり、その姿は他のクワガタムシとは一線を画します。

分布

ギラファノコギリクワガタは、ネパール、ブータン、ミャンマー、タイ、ラオス、ベトナム、カンボジア、マレー半島、インド、インドネシア、ティモール島、フィリピンなど、東南アジアの広範囲に生息しています。地域によって亜種が分化しており、それぞれ異なる特徴を持っています。

形態

成虫の体長はオスで45.0mmから122mm、メスで31.0mmから56.2mmと、亜種によって大きく異なります。体色は一般的に黒色ですが、光沢の強さや上翅の色合いには亜種ごとの差異が見られます。

最大の特徴である大顎は、非常に長く、基部が太く盛り上がり、波打つように湾曲しています。先端は二股に分かれており、内歯（内側のトゲ）は左右非対称な配置となっています。この独特な形状の大顎が、本種の名前の由来であるキリンを連想させます。

分類

ギラファノコギリクワガタは、現在9つの亜種に分類されています。以下に代表的な亜種を紹介します。

Prosopocoilus giraffa giraffa：ネパール、ブータン、インド北東部、ミャンマー、タイ、ラオス、ベトナム、カンボジア、マレー半島に分布。オスは45-107mm、メスは31-48mm。
Prosopocoilus giraffa nirgiriensis：南インドに分布。オスは62.5-101.5mm、メスは44.5-45mm。
Prosopocoilus giraffa borobudur：ジャワ島、バリ島、スマトラ島南部に分布。オスは58-98mm、メスは41-49.5mm。
Prosopocoilus giraffa keisukei：フローレス島、ロンボク島、タナジャンペア島に分布。オスは48.5-118mm、メスは35.5-48.5mm。特にフローレス島産の個体は「フローレスギラファ」と呼ばれ、最大の亜種として知られています。
Prosopocoilus giraffa timorensis：ティモール島、ウェター島に分布。オスは35-91mm、メスは35.5-45mm。
Prosopocoilus giraffa nishiyamai：スラウェシ島に分布。オスは47.5-101mm、メスは37-46mm。
Prosopocoilus giraffa nishikawai：サンギール諸島（タフナ島）に分布。オスは55.5-96mm、メスは43.5-48mm。
Prosopocoilus giraffa makitai：ミンドロ島、ルソン島に分布。オスは47.5-103mm。
* Prosopocoilus giraffa daisukei：ネグロス島、シブヤン島に分布。オスは66-108mm、メスは44-56mm。

生態

ギラファノコギリクワガタは熱帯雨林に生息し、広葉樹の樹液を主な食料としています。オスは餌場やメスを巡って争いますが、他のクワガタムシと比較して特に気性が荒いわけではありません。メスは広葉樹の朽木に産卵し、幼虫は朽木を食べて成長します。幼虫期間はオスの方が長く、孵化から7-14ヶ月で蛹になり、約1ヶ月で羽化します。成虫の寿命は6-15ヶ月と、ノコギリクワガタの中では比較的長寿です。

長すぎる大顎のため挟む力は強くありませんが、基部の内歯は非常に強力で、他のクワガタムシの角に穴を開けるほどです。

人間との関係

ギラファノコギリクワガタは、その独特な外見からペットとしても人気があり、日本にも輸入されています。飼育下での繁殖も可能であり、多くの愛好家によって飼育されています。

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