ギリシャの聖母

ジョヴァンニ・ベッリーニ作『ギリシャの聖母』

『ギリシャの聖母』（伊: Madonna greca）は、イタリアルネサンス期を代表する画家ジョヴァンニ・ベッリーニが1460年から1470年の間に制作したテンペラ画です。板に描かれたこの作品は、左上と右上にギリシャ語のモノグラムがあることからこの名で呼ばれています。また、ビザンチン美術のイコンからの強い影響が見られることも、この名称の由来となっています。

作品の概要

幼子イエスは、手に黄金のリンゴを持っています。このリンゴは、ギリシャ神話におけるパリスの審判を暗示し、聖母マリアを「新しいヴィーナス」として表現していると考えられています。当初、作品の背景はイコンのように金地であったという説がありましたが、1986年から87年の修復作業によって否定されました。修復の結果、中央のカーテンの両側には、鮮やかな青空が広がっていたことが判明したのです。

このカーテンは現存していますが、16世紀には2本の金の縞模様で空が覆い隠されていました。修復中の赤外線検査では、接着剤と石膏を用いた下地処理と、明暗法（キアロスクーロ）による素描の存在が確認されました。これらの技法は、ベッリーニの作品によく見られる特徴であり、パオロ・ピーノの1548年の著書『絵画の対話』にも言及されています。

歴史的背景

18世紀後半、フランス軍がヴェネツィアに侵攻した際、この絵画はドゥカーレ宮殿内のレギュラトーリ・ディ・スクリットゥーラの事務所に保管されていました。その後、絵画は没収され、1808年にはミラノのブレラ美術館に収蔵されました。

作品の魅力

『ギリシャの聖母』は、ビザンチン美術の伝統と、ルネサンス美術の革新性が融合した作品として評価されています。幼子イエスと聖母マリアの穏やかな表情、象徴的なモチーフ、そして精緻な筆致は、観る者を深い感動へと誘います。また、修復によって明らかになった本来の姿は、作品の歴史的価値と芸術的魅力をさらに高めています。ブレラ美術館を訪れた際には、ぜひこの傑作を鑑賞してみてはいかがでしょうか。

この作品は、ジョヴァンニ・ベッリーニの卓越した技術と、彼の芸術的感性を今に伝える貴重な遺産と言えるでしょう。

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