ギヴ・イット・アップ

『ギヴ・イット・アップ』（Give It Up）

ボニー・レイットのセカンドアルバム『ギヴ・イット・アップ』は、1972年にワーナー・ブラザースからリリースされ、彼女の音楽キャリアの中で重要な位置を占める作品です。このアルバムは、フォーク、ブルース、R&B、ソフトロックといったジャンルの融合によって形成された魅力的なサウンドが特徴です。

音楽と歌詞の特徴

アルバムには、豪華なブラスセクションが取り入れられており、特にニューオーリンズスタイルの楽器が際立っています。オープニングトラックである「ギヴ・イット・アップ・オア・レット・ミー・ゴー」は、アコースティックギターの穏やかな響きから始まり、すぐにダイナミックなブラスバンドの音色へと移行します。この変化は、曲のエネルギー感を一層引き立てています。

レイットは、このアルバムのために3曲を自身で作曲し、残りの7曲はジャクソン・ブラウンやクリス・スミザーなどの著名なアーティストによるカバーが含まれています。歌詞のテーマは、女性の視点から描かれた人間関係や自己肯定感が中心に据えられています。伝記作家のマーク・ベゴによると、前作『ボニー・レイット』と比べて、レイットのボーカルはより自信に満ちたものに聞こえます。

オールミュージックの評論家スティーヴン・トマス・アールワインは、レイットの「素朴でセクシーな」魅力がこのアルバムを輝かせていると指摘しています。レイット自身は後に自身のボーカルについて「ミッキーマウスのように聞こえる」と批判的な意見を述べていますが、それが彼女の音楽にユニークな深みを与えていることは疑う余地がありません。

リリースと反響

アルバムは1972年9月にリリースされ、当時としてはまずまずのセールスを記録しました。ビルボードのトップLP＆テープチャートでは138位に達し、1985年にはアメリカレコード協会からゴールド認定を受けました。シングル「トゥー・ロング・アット・ザ・フェア」はプロモーション用にリリースされたものの、その後の音楽チャートには登場しませんでした。

リリース時には、ビルボード誌やRecord World誌からポジティブな評価を受け、特にボニー・レイットの独自のボーカルスタイルやギターテクニックが称賛されました。また、Rolling Stone誌の評論家ジョン・ランダウもこのアルバムを絶賛し、レイットの幅広い音楽スタイルが作品全体を一層魅力的にしていると述べています。

後年の評価も高く、新しいRolling Stone録音ガイドでは、レイットのブルース的才能が現代的なフォークスタイルと融合した点が特に評価されています。また、オールミュージックのスティーヴン・トマス・アールワインは、このアルバムが南カリフォルニアの音楽シーンにおいて極めて価値のある作品であると指摘しています。

トラックリストとパーソネル

アルバムには多様なトラックが収められており、それぞれ異なるスタイルを示しています。ボニー・レイット自身がリードボーカルと様々な楽器を演奏しており、デイヴィッド・ホランドやポール・バターフィールドをはじめとする多くのゲストミュージシャンが参加しています。これにより、アルバム全体が豊かな音楽的体験を提供しています。

このように、ボニー・レイットの『ギヴ・イット・アップ』は、彼女の音楽的成長を体現した名盤であり、フォークとブルースを融合させた作品として長く評価され続けるでしょう。

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