ポール・バターフィールド

ポール・バターフィールド：ブルースとロックの架け橋となったハーモニカ奏者

ポール・バターフィールド（1942年12月17日 - 1987年5月4日）は、アメリカを代表するブルース・ハーモニカ奏者であり、歌手です。彼の音楽は、エレクトリック・シカゴ・ブルースとロックの融合、そしてジャズ・フュージョンの先駆的な試みとして高く評価されています。

生い立ちと音楽との出会い

イリノイ州シカゴで、法律家と画家の家庭に生まれたバターフィールドは、幼少期から音楽に親しみました。当初はクラシック音楽のフルートを学びましたが、次第にブルース・ハーモニカの魅力に惹かれていきます。シカゴのブルース・クラブでマディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフといった伝説的なブルースマンたちと出会い、彼らから激励を受け、ジャム・セッションに参加する中で、その才能を開花させていきました。

ポール・バターフィールド・ブルース・バンドの結成と成功

1963年、バターフィールドは自身のバンド、ポール・バターフィールド・ブルース・バンドを結成します。ギタリストのマイク・ブルームフィールドやエルヴィン・ビショップらを擁し、エレクトラ・レコードと契約。1965年にデビュー・アルバムをリリースし、ブルース・スタンダードや自作曲を収録。1966年には、代表作となる2ndアルバム『イースト・ウェスト』を発表。このアルバムに収録された13分に及ぶインストゥルメンタル曲「East-West」は、インド音楽のラーガの影響を取り入れた、初期のフュージョンやブルースロックの試みとして、音楽史に名を刻みました。

ポール・バターフィールド・ブルース・バンドは、サンフランシスコのフィルモア・ウェスト、ニューヨークのフィルモア・イースト、モントレー・ポップ・フェスティバル、ウッドストック・フェスティバルといった、1960年代後半の主要なコンサートやフェスティバルに出演し、絶大な人気を博しました。彼らの音楽は、エレクトリック・シカゴ・ブルースとロックの緊迫感を融合させ、新たな音楽の可能性を切り開いたのです。

ボブ・ディランとの共演

1965年のニューポート・フォーク・フェスティバルにおいて、ボブ・ディランがエレクトリック・ギターを演奏した際、バターフィールドのバンドがバックを務めたことは、音楽史における重要な出来事として知られています。この出来事は「エレクトリック・ディラン論争」と呼ばれ、フォーク音楽界に大きな波紋を広げましたが、バターフィールドのバンドにとっては、その名を広く知らしめる機会となりました。

その後の活動と早すぎる死

1971年にバンドを解散後、バターフィールドは新たなバンド、ポール・バターフィールズ・ベター・デイズを結成し、ルーツ音楽やフォークを探求しました。また、師と仰ぐマディ・ウォーターズや、ザ・バンドのメンバーらとツアーやレコーディングを続けました。しかし、1987年5月、偶発的な薬物過剰摂取により、44歳という若さでこの世を去りました。

音楽史における功績

ポール・バターフィールドは、その短い生涯の中で、ブルース・ハーモニカの新たな可能性を切り開き、ロック、ジャズ、フォークなど、様々なジャンルの音楽家たちに多大な影響を与えました。2006年にはソロとしてブルースの殿堂入り、2015年にはポール・バターフィールド・ブルース・バンドとしてロックの殿堂入りを果たし、その功績は永遠に称えられています。

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