クイナ科

クイナ科（Rallidae）

クイナ科は、鳥類分類においてツル目に含まれる一群です。この科に属する鳥類は、飛翔能力が進化の過程で失われやすい傾向があることで知られており、特に天敵の少ない島などの隔離された環境では、飛ばない、あるいはほとんど飛ばない固有種が多く出現しました。しかし、これは同時に、人間による環境の変化や外来種の持ち込みに対して脆弱であることを意味し、多くの島嶼固有種が残念ながら絶滅しています。

分布

クイナ科の鳥類は非常に広範な地域に分布しています。アフリカ、南北アメリカ、ユーラシアの各大陸をはじめ、インドネシア、オーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニア、フィリピン、マダガスカル、ソロモン諸島、日本など、世界の様々な環境で見られます。

形態

クイナ科の鳥類は、湿地や密生した植生の中での生活に適応した特徴的な形態を持っています。尾羽は比較的短く、形状は角張っていたり丸みを帯びていたりし、枚数は種によって6枚から16枚まで異なります。翼は短く丸みを帯びた形状で、飛翔力が低い種が多いことと関連しています。初列風切羽は通常10枚、次列風切羽は10枚から20枚です。多くのクイナは繁殖期が終わると、風切羽が一度に抜け落ちる換羽（かんう）を行い、この期間は一時的に飛ぶことができなくなります。体の形は左右から押しつぶされたように扁平（側扁）している種が多く、これは茂みの中を効率的に移動するのに役立ちます。一部の種では、上嘴の付け根から額にかけて硬質の肉板である額板（がくばん）が発達しています。首の長さは短めか、やや長い程度です。後肢は比較的頑丈で長く、趾（あしゆび）も長めです。特に第一趾（後趾）は他の趾よりも高い位置についています。

分類

クイナ科の分類体系は、現在も研究が進められており、いくつかの説が存在します。伝統的には、原始的な特徴を持つとされるウロコクイナ亜科と、それ以外の大多数の種を含むクイナ亜科に分けられることがありますが、亜科を区別しない分類も一般的です。過去には多くの属に細分化されていましたが、その後の研究により整理が進み、現在では17属から36属程度の間に分類されることが一般的です。この科には、クイナ属、オオバン属、バン属、セイケイ属、ヒメクイナ属など、形態や生態が多様な多くの属と種が含まれています。

生態

クイナ科の鳥は、湿原、沼地、湖沼、草原、森林、海岸の茂みなど、極めて多様な環境に生息しています。多くの種は単独で行動することを好む一方、オオバンなど一部の種は繁殖期以外には群れを形成して生活します。長距離の渡りを行わず、同じ地域に定住する種が多い傾向があります。

食性は主に雑食性ですが、植物質のものを多く利用する種もいます。昆虫類、両生類、他の鳥類の雛、小型哺乳類などを捕食するほか、果実や植物の種子なども食べます。

繁殖形態は卵生です。多くの種で一夫一妻のペアを形成し、通常は繁殖期ごとにペアが解消されます。営巣場所は多様で、地上や水辺の茂みの中、樹上などに植物の葉や茎などを使って巣を作ります。また、水生植物の間や、浅瀬に植物の茎や葉、時には石などを積み上げて水面に浮かぶような巣を作る種もいます。抱卵は雌雄が交代で行う種が多く、孵化した雛は綿羽に覆われ、生まれて数日のうちに巣から離れて親と一緒に移動を始める（早成性）ものが大半です。育雛は雌雄が協力して行います。

人間との関係と保全

世界中に広く分布し、多様な環境に適応してきたクイナ科ですが、多くの種が人間活動によって絶滅の危機に瀕しています。主な脅威としては、湿地の開発や農地への転換、森林伐採などによる生息地の破壊・縮小が挙げられます。また、食用のための過剰な狩猟（乱獲）や、人間によって意図的あるいは非意図的に持ち込まれたネコ、ネズミ、マングースといった外来捕食者による雛や卵の捕食も大きな要因となっています。さらに、外来植物の繁茂による植生構造の変化も、クイナ類の生息に適した環境を悪化させています。これらの複合的な要因により、多くのクイナ科の種の生息数が減少し、レッドリストに掲載されている種も少なくありません。生息地の保護や回復、外来種の管理といった保全活動が重要となっています。

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