オオバン

オオバン（大鷭）

オオバン（学名：Fulica atra）は、ツル目クイナ科オオバン属に分類される鳥類の一種であり、オオバン属の模式種です。ユーラシア大陸をはじめ、アフリカ北部、オーストラリア、ニュージーランドなど、広範囲に分布しています。

分布

オオバンは亜種によって分布域が異なります。

F. a. atra：アフリカ大陸北部、ユーラシア大陸、アイスランド、イギリス、スリランカ、日本、フィリピンに分布。夏にはヨーロッパ、シベリア、朝鮮半島などで繁殖し、冬には東南アジアやアラビア半島、サハラ砂漠などに渡り越冬します。日本では、夏に北海道で繁殖し、冬には本州以南で越冬します。
F. a. australis：オーストラリア、ニュージーランドに分布。
F. a. lugubris：インドネシア（ジャワ島）に分布。
F. a. novaeguinea：インドネシア、パプアニューギニア（ニューギニア島）に分布。

形態

全長は32-39cm、翼開長は70-80cmほどです。名前の由来は、同じクイナ科のバンよりも大型であることにあります。頭部から頸部は黒い羽毛で覆われており、頭頂部と後頸部には光沢があります。胴体は灰黒色で、上面は青みがかって見えます。尾羽の基部下面は黒い羽毛で覆われ、尾羽自体は黒褐色です。次列風切の先端は白いのが特徴です。

虹彩は赤色または赤褐色で、嘴は白い色をしています。上嘴から額にかけては白い肉質の額板で覆われているのが特徴的です。夏羽では後肢が黄緑色や緑青色をしていますが、冬羽では灰緑色に変化します。雛は全身が黒い綿羽で覆われており、眼先や喉は赤く、顔や翼はオレンジ色の綿羽で覆われています。幼鳥は全身が黒褐色で、喉から胸部にかけて白い羽毛が見られます。目の周りから眼後部にかけて白い斑紋があり、嘴は黄白色をしています。脚には木の葉のような形状の水かき（弁足）があるため、バンよりも泳ぎが得意です。

亜種

オオバンには以下の亜種が確認されています。

Fulica atra atra Linnaeus, 1758
Fulica atra australis
Fulica atra lugubris
Fulica atra novaeguinea

生態

湖沼、湿原、水田などに生息し、非繁殖期には大規模な群れを形成することがあります。英名であるcootは、オオバンの鳴き声に由来するという説があります。

食性は植物食傾向の強い雑食性で、主に水生植物を食べますが、魚類、鳥類の卵や雛、昆虫、軟体動物なども食べます。

繁殖形態は卵生です。水辺や水生植物の中に、植物を積み重ねた皿状の巣を雌雄で作ります。1-13個の卵を年に2回（3回産むこともあります）産み、雌雄交代で抱卵します。抱卵期間は21-24日です。雌雄ともに育雛を行い、年に2回以上繁殖するため、先に生まれた幼鳥も育雛を手伝うことがあります。

種の保全状況評価

国際自然保護連合（IUCN）によって、軽度懸念（LC）に指定されています。しかし、日本では以下の都道府県でレッドリストに指定されており、地域によっては保護対策が必要です。

絶滅寸前（絶滅危惧I類、CR） - 埼玉県
危急種（絶滅危惧II類・VU） - 栃木県、千葉県、大分県
準絶滅危惧（NT） - 群馬県、富山県、京都府、大阪府、奈良県、山口県、香川県、沖縄県
要注目種 - 宮城県
* 情報不足（DD） - 岩手県、福島県

人間との関係

英名のcootは、ケルト族が本種を指す呼称に由来するという説があります。千葉県我孫子市の指定の鳥であり、市民に親しまれています。狩猟鳥獣には指定されていないため、狩猟による捕獲は禁止されています。しかし、農作物への食害を理由として、有害駆除の対象として捕獲されることもあります。

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