クイルダル

クイルダル（Quyildar）とは

クイルダル（モンゴル語: Quyildar、中国語: 畏答児、? - 1203年）は、13世紀初頭に活躍したマングト部族の指導者で、後にチンギス・カンの重鎮として知られる人物です。日本語の文献や歴史記録においては、彼の名は様々な形で記載されています。特に『元史』や『集史』などの古文献には、彼の重要性が顕著に表れています。

家系とマングト部族の背景

クイルダルは、モンゴル部族の族祖伝承において、ボドンチャルの子孫であるナチン・バートルの六世の孫にあたります。この家系から、ウルウト氏とマングト氏が派生したとされ、クイルダルはそのマングト族の一員として成長しました。彼の兄、グユクは、当時のマングト氏族の代表として知られており、テムジン、すなわち後のチンギス・カンと関わりを持つことになります。

テムジンとの出会い

テムジンと彼の兄が対立した際、マングト部族の多くはジャムカというタイチウト氏側に加担しました。これに対し、クイルダルはわずかな部隊を引き連れてテムジン側に仕官することを決意しました。クイルダルはテムジンに対し忠誠心を示すエピソードが残されており、彼の言葉は「仕えるべき主に仕えず生を終える人間というのは、この折れた矢のようなものであります」とされています。この言葉は、彼の義務感と忠誠心を象徴しています。

軍事的功績と役割

その後、テムジンはクイルダルに「セチェン」という称号を授け、彼を義兄弟として迎え入れました。この名のもとで、クイルダルはマングトの兵士を指揮し、テムジンの右腕として多くの戦闘に参加しました。特に際立ったのは、彼がケレイト部のオン・カンとの戦いで先頭に立ったことです。この戦でのクイルダルの勇敢な行動は、彼の名を歴史に刻むこととなりました。

テムジンが戦局を見定めた際、クイルダルは自ら先陣を切る決断をしました。彼はマングト部族の旗を掲げ、全軍の士気を高めるために率先して突撃しました。しかし、劣勢の中、重傷を負いながらも戦闘を続けたクイルダルは、その後、テムジンの護衛のもとで亡くなりました。

最期とその後

クイルダルの死はテムジンにとって大きな衝撃でした。彼はクイルダルを、オルヌゥ山の半崖に埋葬し、彼の遺志を尊重しました。また彼の家族、特に息子のモンケ・カルジャは、テムジンから手厚い支援を受け、その後のモンゴル帝国の中でも重要な役割を果たしました。

影響と遺産

クイルダルの子孫たちは、マングト部族内でその名声を継承し、モンゴル帝国において重要な地位を占めました。特に、彼の末裔たちの活動は「左手の五投下」の形成に貢献し、後の大元ウルスの強固な地盤を築く要因となりました。彼の家系は、クビライの即位を助けた功績を持ち、《元朝秘史》や《集史》などの資料にしっかりと残されているのは、クイルダルの歴史的な重要性の証明と言えるでしょう。

もう一度検索