クオータ制

クオータ制について

クオータ制（英: quota system）とは、性別、人種、宗教などの属性に基づき、特定の比率で人数を割り当てる制度のことを指します。特に政治や公的機関において、国会や地方議会の議員をはじめ、審議会や委員会の構成員の選出時に導入されています。この制度は、例えば男女の比率に偏りがある場合に、政策決定の場での平等を促進し、差別や不平等を解消する目的で設けられています。

発祥と歴史

この制度の起源はノルウェーにあります。1980年代に、ノルウェー左派社会党のベリット・オースが新政党設立の際に、性別の平等を確保するためクオータ制の採用を提案しました。オースは、産業革命による人口移動を背景に、農村地域や都市地域の代表を公平に割り当てる方式から、性別にも適用すべきだと考えたのです。1978年には男女平等法が施行され、公的機関の構成員において40%以上の性の代表を求める規定が設けられました。

ノルウェーにおける成功が他の北欧諸国へと波及し、デンマークやスウェーデンでもクオータ制が採用されるようになりました。これに伴い、世界中の国々でも男女平等を進める手段として採用が進んでいきました。

現在の実施状況

世界中で、クオータ制を導入している国々は多数あります。例えば、2006年のデータによると、73カ国の163政党が議員候補に対してクオータ制を導入していました。14か国では憲法で、38カ国では選挙法で国会議員のクオータ制が定められています。また、30カ国が地方議会でのクオータ制を法律で明記しています。

特にノルウェーでは現在、女性の国会議員の比率が37.9%に達するなど、クオータ制が広く受け入れられています。さらにルワンダでは、 genocide（虐殺）後、国連の助けを借りてクオータ制を導入し、女性の国会議員割合が48.8%を超えるという驚異的な結果が得られました。

フランスでも、2000年にパリテ法を制定し、女性の政治参加を促進する努力が行われており、国会の女性議員の割合は徐々に増加しています。

OECD加盟国における状況

経済協力開発機構（OECD）に加盟する国々のうち、多くの国がクオータ制を積極的に採用しています。スウェーデン、フィンランド、ノルウェー、デンマークなどでは、国会議員の女性割合が高く、法律や政策を通じてクオータ制を強化しています。一方で、韓国やギリシャのように、男性に対する偏見を排除しつつクオータ制を導入した国もあります。

日本でも、2010年に閣議決定された「第3次男女共同参画基本計画」により、性別に基づくクオータ制が推進されています。特に2020年までに女性の指導的ポジションの割合を30%にすることを目指していますが、実際には低い割合が続いています。

意見と批判

クオータ制に対する意見は国によってさまざまです。フランスでは、クオータ制に懐疑的な見解が多く、肌の色や宗教に基づく区分が普遍主義に反すると主張する声があります。また、アメリカでも人種を考慮した大学入試が憲法違反とされる判決が下されるなど、その在り方が注目を集めています。

このように、クオータ制は性別や人種といったマイノリティの代表を促進する制度として重要でありつつも、その適用には文化的背景や政策的意義を巡る議論が続いています。

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