ククリット・プラーモート

ククリット・プラモート（タイ語：หม่อมราชวงศ์คึกฤทธิ์ ปราโมช、英語：Kukrit Pramoj）は、1911年4月20日に誕生し、1995年10月9日に生涯を閉じたタイの著名な政治家、作家、そして俳優です。

生い立ちと学歴

ククリットは、シンブリー県でチャオプラヤー川の船上で生まれました。父はカムロップ親王、母はブンナーク家出身のモム・デンです。兄には、後に首相を務めたセーニー・プラーモートがいます。ククリットという名前は、「元気で力があるもの」という意味を持ち、幼少の頃から活発な子供でした。

ワッタナーウィタヤーライ校、スワングラープウィタヤーライ校を経て、イギリスのトレント・カレッジに留学。その後、オックスフォード大学クィーンズ・カレッジで哲学、政治、経済の学士号を取得し、修士号も授与されました。

結婚と家族

1936年、モムラーチャウォンイン・パックプリン・トーンヤイと結婚し、二人の子供をもうけました。ククリットは、サートーンタイのソイ・スワンプルーにある邸宅を愛し、この邸宅は現在「ソイ・スワンプルー邸」として知られています。

多彩な才能と業績

ククリットは、文学、演劇、政治など、多岐にわたる分野で優れた業績を残しました。特に文学分野では、タイ文学における名著とされる『王朝四代記』をはじめ、多くの作品を執筆し、数々の賞を受賞しています。また、俳優としても活動し、1963年にはマーロン・ブランド主演の映画『The Ugly American (1963)』に出演しました。

政治家としての活動

1945年に進歩党を結成し、政治活動を開始。1950年にはタイ語日刊新聞『サヤーム・ラット』を創刊し、ジャーナリストとしても活躍しました。1974年には社会行動党を結成し、党首として国務相に就任。1975年にはタイ王国の首相に就任し、地方への助成分配政策を実施しました。彼は雄弁家としても知られ、タイの言葉遊びを交えた演説で人々を魅了しました。

文学作品

ククリットの文学作品は、『王朝四代記』、『赤い竹』、『多くの生涯』が特に有名で、「ククリット・プラモート三部作」として高く評価されています。

小説
『赤い竹』 (ไผ่แดง; 1954)
『王朝四代記』 (สี่แผ่นดิน)
『幾多の生命』 (หลายชีวิต)
短編
Phuean Non (เพื่อนนอน; short stories, 1952)
ノンフィクション
Phama Sia Mueang (พม่าเสียเมือง; 1967)
Huang Mahannop (ห้วงมหรรณพ; 1959)

晩年と遺産

ククリットは1995年10月5日に84歳で亡くなりました。2007年にはタイ王国文化省によってユネスコの世界にとって重要な個人として登録を申請されています。彼の邸宅である「ククリット・ハウス」は、アユタヤ様式の伝統的な建築で、彼のコレクションが展示され、一般公開されています。

『サヤーム・ラット』紙掲載の評論「十二月八日」について

ククリットがジャーナリスト時代に『サヤーム・ラット』紙に発表したとされる「十二月八日」という記事が日本国内で広まっています。この文章は、「日本のおかげで、アジアの諸国はすべて独立した」という内容で、書籍やインターネット上で広く引用されています。しかし、この説の出典は明確ではなく、『サヤーム・ラット』紙にも該当の記事は見つかっていません。この文章は名越二荒之助によって創作されたものとする説が有力です。

日本語訳された主な作品

『王朝四代記』 (全五巻）吉川 敬子訳
『幾多の生命』 レヌカ－・ムシカシントーン訳
『赤い竹 : タイの僧院の物語』並河亮訳

ククリット・プラモートは、タイの歴史と文化に大きな足跡を残した人物であり、彼の作品は今もなお多くの人々に愛され、読まれ続けています。

もう一度検索