クジャクシダ

クジャクシダ（孔雀羊歯）

クジャクシダ（学名: Adiantum pedatum）は、ホウライシダ科ホウライシダ属に分類される夏緑性のシダ植物です。その名の由来は、左右に大きく広がる葉の形が、まるでクジャクの尾羽を広げたように見えることにあります。別名クジャクソウとも呼ばれ、古くから観賞用として親しまれてきました。

特徴

クジャクシダの茎は短く、地中にあって横に這うように伸びます。地表には茶色の鱗片が密生し、春になると多数の葉が束になって生えてきます。

葉柄は細くて硬く、光沢があるのが特徴です。長さは15cmから45cm程度で、基部には鱗片が見られます。葉身は長さ15cmから25cm、幅は30cmにも達し、横に大きく広がった鳥足状の形状をしています。地面から伸びる葉柄の先端から左右に横枝が伸び、それぞれに一回羽状複葉の葉が並び、全体として扇を広げたような美しいシルエットを形成します。

この独特な形状は、羽状複葉の一番下の枝が左右に伸び、そこに小羽片が付くことで生まれます。これは又状仮軸分岐と呼ばれる現象で、軸は細く硬く、黒褐色で艶があります。小葉は薄くてやや硬く、幅広い扇形をしており、その上縁に胞子のう群が並びます。若葉は赤みを帯びた色合いを見せ、観賞価値を高めます。

夏緑性であるため、冬になるとすべての葉が枯れ、春の訪れとともに再び芽吹きます。

分布と生育環境

クジャクシダは、日本では北海道、本州に広く分布し、四国と九州の一部でも見られます。国外では、ヒマラヤから東アジア、北アメリカにかけて分布しており、遺伝的には若干の地域差が見られます。

やや明るい森林内の地面に自生することが多く、時には岩の上にも見られます。湿り気のある、肥沃な土壌を好みます。

利用

新葉の頃に見られる小葉の赤い色合いは美しく、古くから山野草として栽培されてきました。栽培は比較的容易で、土質を選ばないため、初心者にもおすすめです。また、地方変異や特殊なものが少ないため、乱獲の影響も少なく、野生の個体も比較的容易に見ることができます。

類似種

ホウライシダ属には多くの種が存在し、中には「クジャクシダ」の名を持つものもいくつかあります。

ホウライクジャクシダ (Adiantum capillus-junonis)：クジャクシダとは異なり、単羽状複葉です。
オキナワクジャクシダ (Adiantum flabellulatum)：形状はクジャクシダに似ていますが、常緑性で葉がやや硬いのが特徴です。葉身は小型で、羽片の数も少ないです。琉球列島に分布し、森林内の地上に見られます。

これらの類似種と区別する際には、葉の形状や性質、分布地域などに注意すると良いでしょう。

脚注

岩槻邦男 編『日本の野生植物』 シダ、平凡社、1992年3月。ISBN 4-582-53506-2。

関連項目

シダ植物

外部リンク

Adiantum pedatum L. - Integrated Taxonomic Information System (英語)
Adiantum pedatum - National Center for Biotechnology Information (NCBI)
* Adiantum pedatum L. - Encyclopedia of Life

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