岩槻邦男

岩槻邦男

岩槻邦男（いわつき くにお、1934年7月15日 - ）は、日本の植物学者であり、東京大学名誉教授、文化功労者です。兵庫県丹波市出身で、京都大学理学部植物学科を卒業後、同大学院で理学博士号を取得しました。専門はシダ植物の分類学であり、特にヒメシダ科の研究で国際的に知られています。

研究活動

岩槻博士は、京都大学理学部助教授、教授を経て、1981年に東京大学理学部附属植物園教授に就任し、植物園長も務めました。1995年に東京大学を定年退官後は、立教大学教授、放送大学教授、兵庫県立人と自然の博物館館長などを歴任しました。その間、植物の多様性に関する研究を精力的に行い、植物分類学、保全生物学の分野で数多くの業績を残しました。

特に、シダ植物の研究では、日本および周辺地域のヒメシダ科の分類学的研究を深く掘り下げました。その業績は国際的にも高く評価され、新種のシダ植物に「Coryphopteris iwatsukii Holttum」と献名されています。また、植物の多様性に関する研究では、生物多様性保全の重要性を訴え、そのための具体的な行動を提唱しました。

社会活動

岩槻博士は、研究活動に加えて、植物学の知識を広く社会に普及させるための活動にも力を入れてきました。多数の著書を通じて、植物の魅力や重要性を伝え、生物多様性に関する理解を深めることに貢献しました。また、博物館の館長として、植物標本や資料の収集、展示にも尽力し、植物に関する教育活動にも熱心に取り組んできました。

2007年には文化功労者に選ばれ、2009年には瑞宝重光章を受章するなど、その功績は社会的に高く評価されています。また、2016年には第24回コスモス国際賞を受賞しました。

著書

岩槻博士は、数多くの著書を執筆しており、植物学の分野における重要な文献となっています。以下に代表的な著書をいくつか挙げます。

『陸上植物の種』東京大学出版会 1979
『植物とつき合う本 植物分類学への序章』研成社 1983
『日本絶滅危惧植物』海鳴社 1990
『多様性の生物学』岩波書店 1993
『植物からの警告 生物多様性の自然史』日本放送出版協会 1994
『シダ植物の自然史』東京大学出版会 1996
『文明が育てた植物たち』東京大学出版会 1997
『シルクロードに生きる植物たち』研成社 1998
『東京樹木めぐり』海鳴社 1998
『根も葉もある植物談義』平凡社 1998
『生命系 生物多様性の新しい考え』岩波書店 1999
『生物講義 大学生のための生命理学入門』裳華房 2002
『多様性からみた生物学』裳華房 2002
『日本の植物園』東京大学出版会 2004
『図説生物学30講 植物編 1 植物と菌類30講』朝倉書店 2005
『図説生物学30講 植物編 2 植物の利用30講 植物と人とのかかわり』朝倉書店 2006
『日本の消えゆく植物たち』研成社 2007
『生物多様性のいまを語る』研成社 2009
『生物多様性を生きる』ヌース出版 2010
『生命（いのち）のつながりをたずねる旅』ミネルヴァ書房 2012
『図説生物学30講 環境編 2 系統と進化30講 生き物の歴史を科学する』朝倉書店 2012
『桜がなくなる日 生物の絶滅と多様性を考える』平凡社新書 2013
* 『新・植物とつきあう本』研成社 2013

これらの著書を通じて、岩槻博士は植物学の専門知識だけでなく、生物多様性の重要性や自然保護の必要性についても広く社会に訴えかけました。

まとめ

岩槻邦男博士は、植物学、特にシダ植物の分類学における第一人者であり、植物の多様性に関する研究においても多大な貢献をしました。また、その知識を社会に還元する活動も積極的に行い、多くの人々に植物の魅力を伝え、生物多様性保全の重要性を啓発しました。彼の業績は、今後の植物学研究や生物多様性保全活動にとって重要な指針となるでしょう。

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