クヌート・ラスムッセン

クヌート・ラスムッセン（Knud Johan Victor Rasmussen、1879年6月7日 - 1933年12月21日）は、グリーンランド出身の探検家であり、人類学者です。「エスキモー学の父」とも呼ばれ、北西航路を犬ぞりで初めて横断した人物として知られています。彼の業績は、グリーンランド、デンマーク、そしてカナダのイヌイットの間で広く認識されています。

生涯

ラスムッセンは、グリーンランドのイルリサット（デンマーク名：Jakobshavn）で、デンマーク人の宣教師の父とイヌイットの母の間に生まれました。幼少期はグリーンランドのイヌイット（Kalaallit）の中で過ごし、彼らの言語、狩猟技術、犬ぞりの操縦、そして厳しい気候下での生活術を学びました。その後、シェラン島の北部にあるリンゲで教育を受け、20歳頃には俳優やオペラ歌手を目指しましたが、成功には至りませんでした。

1902年から1904年にかけて、「文学探検隊」と呼ばれる最初の探検旅行に、ヨルゲン・ブロンド、ハラルド・モルトケ、ルドヴィグ・ミリュウス＝エリクセンと共に参加し、イヌイット文化の調査を行いました。帰国後、講演活動を行い、1908年にはイヌイットの風俗をまとめた旅行記『極北の人々』（The People of the Polar North）を出版しました。同年には、ダーグマル・アンデルセンと結婚しました。

1910年には、友人のピーター・フロイヘンと共に、グリーンランドのケープ・ヨークにチューレ交易基地を設立し、これがラスムッセンの7回にわたる探検旅行の拠点となりました。

1912年、ラスムッセンとフロイヘンは、アメリカの探検家ロバート・ピアリーが主張したピアリーランドがグリーンランドと海峡で隔てられているという説の真偽を確かめるために最初の探検を実施しました。内陸氷床を1000kmにわたり探検した結果、ピアリーランドが半島であることを証明し、この功績は王立地理学会会長のクレメンツ・マーカムから「犬ぞりによる最も優れた業績」と称賛されました。フロイヘンはこの探検について、『放浪のバイキング』（Vagrant Viking, 1953年）と『ラスムッセンと航海した』（I Sailed with Rasmussen, 1958年）の2冊の探検記を出版しました。

1916年から1918年にかけて行われた2回目の探検では、7人のチームでグリーンランド北海岸部の地理情報を収集しました。この探検は、ラスムッセンの探検の中で唯一、2人の犠牲者を出すという悲劇に見舞われました。この探検の記録は、1921年に『極海のグリーンランド』（Greenland by the Polar Sea）としてまとめられました。1919年には、ロアール・アムンセンの探検を支援する3回目の探検を行い、1919年から1920年にはグリーンランド東部を探検し、アングマサリク周辺の民族学的資料を収集しました。

1921年から1924年の探検は、エスキモーの人種的起源を解明することを目的とし、民族学、考古学、生物学的な資料が収集され、現在デンマークの博物館に展示されています。10巻からなる『第五次チューレ探検隊報告』（The Fifth Thule Expedition 1921-1924）は1946年に出版されました。探検隊はカナダ東部北極圏で、標本の収集、インタビュー、発掘調査を行いました。ラスムッセンはチームを離れ、2人のイヌイットの猟師と犬ぞりで16ヶ月かけて、アラスカのノームまで北アメリカを横断しました。その後、ロシアへの渡航を試みましたが、ビザが取得できませんでした。この旅行記は、1927年に『北極アメリカ横断』（Across Arctic America）として出版されました。2006年には、カナダで『クヌート・ラスムッセンの日記』（The Journals of Knud Rasmussen）として映画化されました。

1923年には、北極圏探検の功績が認められ、英国王立地理学会から金メダル（創立者メダル）を授与されました。

その後7年間、ラスムッセンはグリーンランドとデンマークを往復し、講演活動や執筆活動を行いました。1931年には、ノルウェーとデンマークが領有を争っていたグリーンランド東部の調査を行い、1933年に7回目の探検でキビヤックによる食中毒にかかり、コペンハーゲンで肺炎により亡くなりました。

[小惑星]クヌートは、彼の名前にちなんで命名されました。

もう一度検索