クバーニ人民共和国

クバーニ人民共和国とは

クバーニ人民共和国（ウクライナ語: Кубанська Народна Республіка；ロシア語: Кубанская Народная Республика）は、現在のクバーニ地方にコサックが建国した国家です。1918年に独立を宣言しましたが、ロシア内戦において反ボリシェヴィキ勢力として活動し、最終的に共産主義政権によって滅亡しました。

建国の背景

ロシア帝国時代、クバーニ地方はクバーニ・コサック軍の所領であり、独自の歴史と文化を持っていました。この地域は、西部と中部の黒海コサック軍、南部と北部のカフカース防衛線コサック軍の子孫によって構成されていました。コサックは、長年にわたりロシアの国境防衛を担い、その忠誠心から税の免除や自治権などの特権を与えられていました。しかし、アレクサンドル2世の時代になると、クバーニ地方は投資対象として重視され、農民の移住が奨励され、コサックとの間で土地を巡る対立が生じるようになりました。

二月革命と独立宣言

1917年の二月革命で帝政が崩壊すると、クバーニでは自治を求める動きが活発化しました。臨時政府が第一次世界大戦の継続を決定したことに失望したクバーニ・コサックは、前線を離れて故郷に戻り、オスマン帝国の侵攻に備え始めました。同年3月には、クバーニ・ラーダ（議会）がクバーニにおける唯一の政府であると宣言し、軍事政府を組織しました。6月17日には、新しいロシア民主共和国の枠内でクバーニ人民共和国の建国が宣言されました。

ロシア内戦での役割

ボリシェヴィキによる十月革命でロシア共和国が倒れると、クバーニではグループ間の意見の不一致が顕著になりました。多くの非コサック農民はボリシェヴィキ政権に感化されましたが、クバーニ・ラーダは1918年2月16日にロシアからの独立を宣言しました。その後、ラーヴル・コルニーロフ率いる義勇軍がボリシェヴィキ系の赤軍を撃破すると、クバーニ・ラーダは義勇軍の下に入り、白軍派を支援することになりました。

しかし、コサックの内部では、ウクライナ系コサックとロシア系コサックの間に意見の対立が生じました。前者は完全な独立を志向する一方、後者は「大ロシア国家」の再建を夢見ていたためです。白軍はクバーニ・コサックを分離主義者と見なし、アントーン・デニーキン将軍はクバーニ・ラーダに不満を募らせるようになりました。ラーダはウクライナ国やグルジア民主共和国との連邦同盟を模索しましたが、その動きは白軍や連合国の不興を買いました。

滅亡と遺産

1919年11月6日、デニーキンはクバーニ・ラーダの庁舎を包囲し、主要メンバーを逮捕しました。その後、ロシア系コサックはデニーキンを支持し、義勇軍として戦いましたが、1919年12月以降、デニーキンは敗北し、赤軍の侵攻が迫りました。ウクライナ系コサックはラーダを再建し、ボリシェヴィキに対抗しようとしましたが、1920年初頭には赤軍によってクバーニの大半が占領され、議会もデニーキンも駆逐されました。

ソ連およびロシア連邦の歴史家は、クバーニ人民共和国の白軍からの離反を「裏切り」と見なしています。一方で、ウクライナの歴史家は、クバーニ人民共和国はクバーニ・コサックによるウクライナとの連携の試みであったと主張しています。最後の首相であるヴァスィーリ・イヴァニスは、もしウクライナがもっと毅然とした態度で臨んでいたら、反ボリシェヴィキ運動の中心となり、ロシアを早期に取り戻すことができたかもしれないと述べています。

関連項目

クバーニ
クバーニ・コサック軍
クバーニ・ソビエト共和国
クバーニ＝黒海ソビエト共和国

参考文献

Bilyi, Dmytro (2005). “Ukraine and Kuban in 1917-1921. United in conflict” (ウクライナ語). Virtualna Rus'. 2008年4月4日閲覧。
“Ukrainian Kuban” (ウクライナ語). Haidamaka. 2008年4月4日閲覧。

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