クプヤンシクの戦い

クプヤンシクの戦い：ウクライナ東部反攻における重要な転換点

クプヤンシクの戦いは、2022年9月8日から16日にかけて、ウクライナ東部反攻の中で行われた重要な戦闘です。この戦いは、ウクライナ軍がロシア軍からクプヤンシクを奪還しただけでなく、その後の戦況に大きな影響を与えました。

戦闘の背景

クプヤンシクは、2022年2月27日から9月10日までロシア軍に占領されていました。ロシア軍が侵攻してきた際、ウクライナ軍は鉄道橋を爆破して進軍を遅らせようとしました。しかし、親ロシア派の市長ヘンナジー・マツェホラは、戦闘を停止する代わりに都市をロシア軍に明け渡すことに同意しました。これにより、ウクライナ政府はマツェホラを反逆罪で起訴しました。その後、クプヤンシクは、ロシアが支援するハルキウ軍民当局の事実上の本拠地となりました。

戦闘の経過

戦闘開始前の9月5日、ウクライナ軍はクプヤンシクのロシア軍基地を攻撃し、100人以上の死傷者を出したと主張しました。9月8日、ウクライナ軍が大規模な反攻を開始し、数日で20以上の集落を奪還したことを受け、クプヤンシクのロシア占領当局は防衛を開始したと発表しました。クラーケン連隊のウクライナ兵は9月9日にクプヤンシク郊外に入り、翌朝には市議会の建物を奪還しました。戦闘により、市中心部の大部分が損傷を受けましたが、その日の午後にはウクライナ当局がクプヤンシクの解放を発表しました。

クプヤンシクの奪還を受けて、マツェホラの後任の親ロシア派市長マキシム・グビンはロシアに逃亡しました。ロシア軍はオスキル川東岸のクプヤンシク＝ヴズロヴィイ町に退却し、撤退中に連絡橋を破壊しました。隣接都市での戦闘中、ロシア軍はクプヤンシクの食肉工場を爆撃し、約1000頭の豚が犠牲になりました。ウクライナ軍は9月16日に同地を奪還し、戦闘後にはロシア兵の遺体がクプヤンシクとクプヤンシク＝ヴズロヴィイの両方に散乱していました。

戦闘の余波

ウクライナによるクプヤンシクの解放後、ロシア軍は同市への砲撃を開始しました。9月13日の最初の攻撃では民間人2人が死亡し、翌日の空爆で1人が負傷しました。9月18日には砲撃により5人が負傷、2日後の砲撃では民間人2人が死亡、5人が負傷しました。9月22日の砲撃では女性1人と子供2人が負傷し、9月27日には教会が攻撃され、民間人5人が負傷しました。

さらに、10月3日にはロシア軍が病院を砲撃し、医師1人が死亡、看護師1人が負傷。10月5日には空爆で女性1人が負傷しました。9月26日には、クプヤンシク付近から避難していた民間人の車列がロシア軍の砲撃を受け、26人が死亡するという痛ましい事件も発生しました。また、市内のロシア行政センターでは拷問の痕跡が発見され、ロシア軍の残虐行為が明らかになりました。

戦略的な重要性

フィナンシャル・タイムズは、この戦闘を「ウクライナ戦争の進路を変えた90キロメートルの旅」と表現しました。これは、クプヤンシクの奪還がウクライナ軍の反攻を成功に導き、その後の戦況に大きな影響を与えたことを示唆しています。クプヤンシクは、ロシア軍にとって重要な補給路の拠点であったため、その喪失はロシア軍にとって大きな打撃となりました。

クプヤンシクの戦いは、ウクライナ軍の戦術的な勝利だけでなく、ロシア軍の侵攻に対するウクライナ国民の抵抗の象徴となりました。この戦いを通じて、ウクライナ軍は国土防衛への強い決意を示し、国際社会からの支援を確実なものとしました。

関連情報

2022年ウクライナの東部反攻
バラクリヤの戦い
シェフチェンコヴェの戦い
ハルキウの戦い (2022年)

もう一度検索