2022年ウクライナの東部反攻

2022年ウクライナ東部反攻

2022年9月6日から始まったウクライナ軍による東部反攻は、ロシアによるウクライナ侵攻における戦況を大きく変える転換点となりました。この反攻作戦は、ハルキウ州を中心にドネツィク州、ルハーンシク州の一部で展開され、ウクライナ軍は広範囲な地域を奪還することに成功しました。

前段：ロシア軍の侵攻とウクライナ軍の抵抗

ロシア軍は侵攻初期にハルキウ州の広大な地域を占領しましたが、ウクライナ軍もハルキウ市などを保持し、抵抗を続けました。特に、ハルキウへのロシア軍の砲撃は激しく、多くの民間人が犠牲になりました。ウクライナ軍は3月と5月の反撃でロシア軍を郊外から撃退しましたが、ロシア軍の攻撃は8月まで続きました。

ウクライナ軍の反撃準備

ウクライナ軍は南部での反攻作戦を宣伝し、ロシア軍の注意をそちらに引きつけました。ロシア軍はヘルソン州に精鋭部隊を配置しましたが、これはウクライナ軍の陽動作戦でした。東部反攻に先立ち、ウクライナ軍はアメリカから供与されたHIMARSを使用し、ロシア軍の補給線や弾薬庫を攻撃し、ロシア軍の士気を低下させました。ロシア軍は、ハルキウ州での戦力が不足し、活動が停滞していました。

第一段階（9月6日～12日）：奇襲と前線突破

9月6日、ウクライナ軍はハルキウ州でロシア軍を奇襲し、反撃を開始しました。最初の2日間でウクライナ軍は20キロメートル進出し、400平方キロメートルの領土を奪還しました。9月9日までには前線を突破し、イジュームの北西まで到達しました。9月10日にはイジュームを奪還し、アメリカのシンクタンクは、ウクライナ軍が2,500平方キロメートルの領土を解放したと分析しました。

ウクライナ軍は、バラクリヤ北西のプリシブに特殊作戦軍と第92独立機械化旅団を集結させ、ロシア軍をドネツ川とセレドナ・バラクリヤ川左岸に後退させました。9月7日には20キロメートル前進し、400平方キロメートルを奪還しました。9月8日までにイジューム北部のロシア軍防御陣地を突破し、50キロメートル前進しました。9月10日、ウクライナ軍はバラクリヤを解放し、ロケット・砲兵部隊最大の弾薬庫を奪還しました。ロシア占領当局はイジューム、クピアンスクの住民に避難命令を出し、現地住民はロシア軍が武器を放棄して撤退したと証言しました。9月10日、ウクライナ軍はイジュームとクピアンスクを奪還しました。ロシア国防省は、部隊を再編成し、ドネツク州前線を強化すると発表しました。ウクライナ大統領は、反攻開始後、2,000平方キロメートルの地域を奪還したと述べました。

9月11日、ウクライナ軍は数カ所で前線を70キロメートル突破し、3,000平方キロメートルの地域を奪還したと報じられました。ロシア軍はハルキウ州の占領地域から撤退しました。同日夜、ハルキウなどの重要インフラがミサイル攻撃を受け、停電が発生しました。9月12日、ウクライナ軍は20か所以上の集落を奪還し、ハルキウ州のロシア占領地域は9月13日までにほぼ全て奪還されました。

第二段階（9月13日以降）：オスキル川への進軍とリマン奪還

9月13日、ウクライナ軍はオスキル川を渡河し、橋頭堡を築きました。9月15日にはドネツィク州ソスノヴェ、9月16日にはクプヤンシクを奪還し、オスキル川の橋頭堡を拡大しました。これにより、ルハーンシク州のロシア軍補給線が脅威に晒されました。9月19日には、ルハーンシク州ビロホリウカをウクライナ軍が奪還しました。

ウクライナ軍は、ドネツィク州リマンに進軍しました。リマンはロシア軍にとって重要な補給拠点であり、ドネツ川の防衛拠点となっていました。9月28日にはリマン北西のノヴォセリフカを奪還し、9月30日にはリマン南東のヤンピルを奪還しました。10月1日、ウクライナ軍はリマンを奪還し、ロシア軍は市内から撤退しました。10月2日にはルハーンシク州ディプロバを奪還しました。

戦果と影響

東部反攻作戦は、ウクライナ軍にとって大きな勝利となりました。この反攻作戦により、ウクライナ軍は広範囲な領土を奪還し、ロシア軍の補給線を寸断し、ロシア軍の士気を大きく低下させました。また、ロシア軍が撤退した地域からは、集団墓地や拷問部屋が発見され、ロシア軍による残虐行為が明らかになりました。

この反攻作戦は、その後の戦局に大きな影響を与え、ウクライナ軍のさらなる反攻の足がかりとなりました。また、国際社会からのウクライナへの支援を促進することにも繋がりました。

集団墓地と拷問部屋の発見

ロシア占領地域では、解放後に拷問部屋が発見されました。ハルキウ州では10か所以上の集団墓地と拷問部屋が発見されました。イジュームでは、民間人が拘束され、拷問や処刑を受けた形跡が多数発見されました。また、民間人の死者は1,000人に達すると推定されています。イジュームの集団墓地では、遺体の多くが民間人であり、拷問を受けた痕跡があったことが明らかになりました。

部隊表彰

ウクライナのゼレンスキー大統領は、解放後のイジュームを訪問し、作戦参加部隊に勲章を授与しました。主な授与部隊は以下の通りです。

第14独立機械化旅団
第92独立機械化旅団
第25独立空挺旅団
第80独立空中強襲旅団
第107ロケット砲兵旅団
第15独立砲兵偵察旅団
第26独立砲兵旅団
第40独立砲兵旅団
第43独立砲兵旅団
第44独立砲兵旅団
* ウクライナ国防省情報総局

住民投票への影響

ロシアは、ドネツク人民共和国およびルガンスク人民共和国のロシア併合に関する住民投票を計画していましたが、ウクライナ軍の反攻により延期を余儀なくされました。しかし、その後、住民投票は9月23日から27日に前倒しで実施され、ロシアは併合を宣言しました。

脚注

この東部反攻作戦は、2022年ウクライナ戦争における重要な転換点となり、その後の戦況に大きな影響を与えました。ウクライナ軍の勇敢な戦いと、国際社会の支援が、この勝利に大きく貢献しました。

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