クボタショック

クボタショックの概要

クボタショックは、2005年6月29日に毎日新聞が報じた、兵庫県尼崎市にあるクボタ旧神崎工場の周辺住民に影響を及ぼすアスベスト（石綿）疾患の問題を発端とした公害事件です。工場では1954年から1995年にかけてアスベストを使った水道管や建材が製造されており、この間に発生した健康被害が明らかになりました。

事件の発端

アスベスト被害の認識が高まる中、2004年2月には日本初のアスベスト被害者団体「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」が設立されました。その後、制作プロダクション「ドキュメンタリー工房」のスタッフがこの患者団体と接触し、アスベストに関する実態調査を進めました。

この過程で、職場以外でアスベストに曝露されたケースとして、ガソリンスタンドの女性店長が名前を挙げられ、彼女の訴えからクボタが関与している可能性が見出されました。患者団体がクボタに対して労災死亡者数を問い合わせたところ、尼崎市の旧神崎工場が68人と高い数値を示していたことが判明し、その後の報道へと繋がりました。

報道の影響

2005年5月28日、ドキュメンタリー工房が制作した『終わりなき葬列 〜発症まで30年・いま広がるアスベスト被害〜』が放送されましたが、クボタの名前は伏せられており、影響は限定的でした。しかし、6月中旬に毎日新聞の記者がこの問題に関して取材を始め、6月29日に大きな報道が行われました。その結果、クボタは6月30日に中皮腫患者への見舞金の支払いを決定しました。

救済金制度の設立

同年6月30日、クボタは最初の見舞金支払いを発表し、8月には「お見舞金（弔慰金）」制度の導入を公表しました。この制度では対象者に一律200万円が支給されることとなりました。さらに、被害者達が補償を求める声が強まる中、11月にはクボタの幹部が被害者に初めて謝罪しました。

翌年の2006年には、クボタと被害者側との交渉が進み、同年4月には「旧神埼工場周辺の石綿疾患患者並びにご家族に対する救済金支払い規定」が制定されました。規定内容では最高4600万円、最低2500万円の救済金支払いが定められ、居住歴や通学・通勤歴が基準とされました。

現在の状況

2021年3月末時点で、クボタは265名の住民被害者に救済金を支払い、労災認定を受けた元従業員の数は190名に達しました。アスベストによる健康被害は長い潜伏期間を持つため、今後も被害者が増加する可能性があります。支援団体は、過去の対応に対する反省と、今後の適切な謝罪・補償が必要であると警鐘を鳴らしています。

特に、クボタの社長が歴史的な謝罪の場を設け、被害者やその家族と向き合う姿勢が求められています。2021年にはさらに多くの被害者が確認される見込みで、クボタの対応が引き続き注視されています。

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