クラウディウス・ドルニエ

クラウディウス・ドルニエ

クラウディウス・ドルニエ（Claudius Dornier、1884年5月14日 - 1969年12月5日）は、20世紀のドイツ航空界を牽引した傑出した技術者です。特に、当時世界最大級を誇った飛行艇ドルニエDo Xの設計者としてその名を知られています。

彼はバイエルン地方のケンプテンで生まれ、ミュンヘン工科大学で機械工学を修めました。卒業後、1910年に当時の最先端企業であったツェッペリン飛行船会社に入社し、キャリアをスタートさせます。ここでは全金属製の硬式飛行船に関する空力研究に従事し、その才能はすぐに社長であるツェッペリン伯爵の認めるところとなりました。この評価を受け、リンダウに新設されたツェッペリン・リンダウ製作所の所長に任命されます。これにより、彼は自身の航空理論に基づいた機体の設計・製作を本格的に開始しました。

1916年には設計部門がフリードリヒスハーフェンへと移り、ここで彼はCL.IとD.Iという二つの重要な航空機を生み出します。これらの機体は、当時としては画期的な金属製応力外皮構造を採用しており、航空機の構造技術における先駆的な試みでした。特にD.Iは、トーションボックス式の片持翼や胴体下面への落下式増槽の採用など、その先進性で注目を集めました。

第一次世界大戦でのドイツの敗戦後も、ドルニエはフリードリヒスハーフェン近郊の工場を拠点に航空機の開発を継続しました。この時期、彼は金属製航空機開発の第一人者としての評価を確立しており、後に航空界で名を成すハンス・クレム、アレクサンダー・リピッシュ、アドルフ・ロールバッハ、リヒャルト・フォークトといった優秀な技術者たちが彼の元で働いていました。同時期に活躍したフーゴー・ユンカースとは、技術開発や市場において互いに意識し合うライバル関係にありました。

ヴェルサイユ条約によってドイツ国内での航空機開発に厳しい制限が課せられたため、ドルニエはこれを回避するべく、ボーデン湖を挟んだ対岸のスイス、ロールシャッハに組み立て拠点を設けました。さらに1922年には、イタリアのピサにCMASA (Costruzioni Mechaniche Aeronautiche S.A.) を設立し、双発飛行艇Do J「ワール」の生産を開始するなど、活動の場を国外にも広げました。この時期にはツェッペリン社からの支援が途絶え、ドイツ国内の旅客機市場においては、ユンカース社が先行する状況となっていました。

このような状況下、ドルニエは巨大飛行艇Do Xの開発に注力します。定員160名を誇るこの機体は、1931年8月27日にブラジル経由での大西洋横断飛行を成功させ、その輸送能力の面でユンカース社の機体を凌駕する性能を示しました。この偉業は世界的な注目を集めましたが、世界恐慌の影響や商業的な困難から、定期航路の開設や機体の販売は計画通りには進みませんでした。

クラウディウス・ドルニエは、金属製航空機の可能性を追求し、大型飛行艇開発において画期的な業績を残しました。彼の革新的な設計思想と技術は、その後の航空機開発に大きな影響を与え、航空史における重要な人物として記憶されています。

関連項目

* Do 335

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