クラユカバ

アニメ映画『クラユカバ』：大都市の地下に潜む謎を解き明かせ

2024年4月12日、劇場公開された長編アニメーション映画『クラユカバ』（KURAYUKABA）。上映時間61分の大冒険が、観る者を魅了する。舞台は、巨大都市の地下深く、廃坑や暗渠が入り組む、謎めいた世界「クラガリ」だ。

物語の始まり：失踪事件と装甲列車

主人公は、私立探偵の荘太郎。先代からの遺産を切り売りしながら、気ままな日々を送る青年だ。そんな彼のもとに、ある日、馴染みの記者・稲荷坂から、不可解な集団失踪事件の調査依頼が舞い込む。しかし、調査に乗り出した直後、荘太郎は、彼を支える情報屋サキを、地下ギャング集団「福面党」に誘拐されてしまう。

サキを取り戻すため、荘太郎はクラガリへと足を踏み入れる。そこは、警察の力も及ばない無法地帯。そこで荘太郎は、想像をはるかに超える光景を目撃する。それは、ギャングたちを圧倒的な力で蹴散らす、装甲列車「ソコレ四六三」、そしてその指揮官であるタンネの存在だった。

魅力的なキャラクターたち

本作には、個性豊かなキャラクターたちが登場する。

荘太郎: 遺産を切り売りする怠惰な探偵だが、サキの誘拐をきっかけに、事件の真相解明に奔走する。特報とパイロットフィルムでは衣装デザインが変更されている点にも注目だ。
タンネ: ソコレ四六三の指揮官。小柄ながら鋭い眼光と、腕に抱えるクダギツネが印象的だ。
トメオミ: タンネの警護役。寡黙だが、高い戦闘能力を持つ。
指揮班長（甲斐允）: ソコレ四六三の隊員たちをまとめる頼れるリーダー。
サキ: 荘太郎の情報屋。クラガリの調査中に誘拐され、物語の重要な鍵を握る少女。
稲荷坂: 荘太郎の依頼主である記者。事件の情報を提供する人物。

クラガリ：地下世界の舞台

物語の舞台となるクラガリは、亜炭の廃坑や暗渠、地下鉄の未成線などが複雑に絡み合った、独特の空間だ。その全貌は未だ謎に包まれており、ギャングたちが暗躍する危険な場所となっている。物語をさらに盛り上げるのは、クラガリに存在する様々な施設だ。水上に作られた歓楽街「水ノチマタ」や、クラガリを支配するギャング集団「福面党」など、独特の文化が形成されている。

見どころ：装甲列車とメカニックデザイン

本作の大きな見どころの一つは、装甲列車「ソコレ四六三」の存在だ。南満洲鉄道の社線用装甲列車をモデルとした、重厚感のあるデザインが魅力的。さらに、ソコレ四六三に搭載された歩行戦車「ウノハナ」や、「福面党」が使用する装脚軌道車「ツチブタ」、軽装脚運搬車「カマドウマ」など、個性的なメカニックデザインが物語に深みを与えている。

制作陣と音楽

本作は、塚原重義によるオリジナル長編アニメーション作品であり、監督・脚本・原作を務める。キャラクターデザインは皆川一徳、特技監督はmaxcaffyなど、実力派スタッフが結集。音楽も魅力的で、主題歌「内緒の唄」（チャラン・ポ・ランタン）、挿入歌「浮名ざんげ」（小唄勝太郎）、「燦めく星座」（灰田勝彦）など、時代を感じさせる楽曲が物語を彩っている。

受賞歴と制作背景

『クラユカバ』は、2023年6月に第27回ファンタジア国際映画祭に出品され、長編アニメーション部門観客賞金賞を受賞。その他、ウィーン日本映画祭、イマジンファンタスティック映画祭、新潟国際アニメーション映画祭など、数々の映画祭に出品され、高い評価を得ている。2度のクラウドファンディングで資金調達を行い、2021年には冒頭15分を「序章」として先行公開している。

繋がり：過去作品との関連性

『クラユカバ』は、塚原重義の過去作品「甲鉄傳紀シリーズ」と世界観を共有している。そのため、過去作品と共通するガジェットや用語が数多く登場し、ファンにはたまらない作品となっている。また、有野いく氏をモデルにしたキャラクターや、成田良悟氏によるスピンオフ小説なども存在するなど、様々な要素が絡み合い、作品の世界観をさらに深めている。

『クラユカバ』は、魅力的なキャラクター、緻密なメカニックデザイン、そして謎めいた地下世界という、多くの要素が凝縮された、見応えのあるアニメーション映画である。未体験の冒険をぜひ劇場で堪能していただきたい。

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