クリスチャン5世 (デンマーク王)

クリスチャン5世の生涯

クリスチャン5世（1646年4月15日 - 1699年8月25日）は、デンマーク＝ノルウェーの王として、1670年から1699年まで在位しました。彼はフレゼリク3世とゾフィー・アマーリエの長男として、シュレースヴィヒ公国のフレンスブルクで生まれました。1667年にはヘッセン＝カッセル方伯の娘シャルロッテ・アマーリエと結婚し、1670年に父王の崩御を受けて王位を継承しました。彼の血筋は、イギリス女王アンの王配ヨウエンが弟、ハノーファー選帝侯兼イギリス王ジョージ1世が母方の従弟にあたります。

クリスチャン5世は、勇敢で愛想の良い人物として国民からの人気が高かったとされています。しかし、スコーネ戦争でのスコーネ地方奪還の失敗により、その評価は大きく揺らぎました。この戦争はデンマークに経済的な打撃を与えただけで、領土の拡大などの利益をもたらすことはありませんでした。

市民の支持と絶対王政

クリスチャン5世が市民から支持を集めた理由の一つに、一般市民が国家機関で働くことを可能にした点が挙げられます。これは貴族の力を削ぐことを意図したもので、父王の進めた絶対王政をさらに推し進めるものでした。彼は、貴族の地位を持たない人々を政府の役職に登用するために、伯爵と男爵の爵位を新設しました。その代表的な人物が、1670年にグリッフェンフェルト伯爵の称号を与えられ、1674年に高等顧問官となったペダー・シューマッハーです。

グリッフェンフェルトは、フランスと同盟関係にあるスウェーデンへの攻撃がデンマークを危険にさらすことを王よりも良く理解していました。しかし、スコーネ戦争では、1675年から1679年の対スウェーデン海上戦で勝利したにもかかわらず、最終的にはフランスの意向により、スカンディナヴィア半島の国境線を変更するという当初の目的を達成することができませんでした。この戦争はデンマークに政治的、経済的にほとんど利益をもたらさず、さらに最も有能な助言者であったグリッフェンフェルトは、1676年に敵対派によって売国奴として失脚させられ、その後の人生を牢獄で過ごすことになりました。

フォンテーヌブロー条約とルンド条約

1679年のフォンテーヌブロー条約は、スウェーデンの同盟国フランスから押し付けられたものでした。デンマークは、この戦争でスウェーデン領土の一部を占領していたにもかかわらず、フランスの軍事的な圧力に屈し、領土を返還せざるを得ませんでした。この結果、デンマーク国内では不満が高まりました。同様に、フランスに主導権を握られてしまったスウェーデンでも反フランス感情が高まり、両国は、フォンテーヌブロー条約に基づいて、ルンド条約を締結し、スウェーデンと同盟を結ぶことになりました。この条約によって、クリスチャン5世の妹ウルリカ・エレオノーラがスウェーデン王カール11世と結婚しました。

法典の編纂と内政

クリスチャン5世は、1683年にデンマーク初の法典「Danske Lov」を発布しました。1687年にはノルウェーでも同様の「Norske Lov」を発布しています。さらに1688年には、土地登記制度を導入し、税制改革にも着手しました。また、神聖ローマ帝国でザクセン＝ラウエンブルク公領を巡る紛争が勃発し、1693年にハンブルクで和議を締結した結果、クリスチャン5世は伯父のリューネブルク侯ゲオルク・ヴィルヘルムのザクセン＝ラウエンブルク公領の領有を認めました。

クリスチャン5世の人物像

同時代の資料によると、クリスチャン5世は教育に熱心ではなく、顧問官に頼ることが多かったとされています。彼は、狩猟、情交、戦争、海事を主な関心事としていました。スウェーデン王カール11世が、スウェーデン語とドイツ語しか話せず、外交使節と直接会話することができなかったため知性的ではないと見なされていたのと似たような状況でした。

1699年、狩猟中の事故が原因で死去し、ロスキレ大聖堂に埋葬されました。彼は科学的な知識や興味はあまり持っていませんでしたが、天文学者オーレ・レーマーの活躍により、その治世下でデンマークは科学の黄金時代を迎えました。

家族と子女

クリスチャン5世は王妃シャルロッテ・アマーリエとの間に8人、愛人との間に5人の子供がいました。彼は、16歳の愛人ソフィーエ・アマーリエ・モートを公然と宮廷に引き入れ、王妃を侮辱しました。モートは、1677年に伯爵夫人に叙せられました。

王妃との間には8人の子供がいましたが、成人したのはフレゼリク4世、ソフィーエ・ヘゼヴィ、カールだけでした。愛妾のソフィーエ・アマーリエ・モートとの間には5人の庶子がいましたが、成人したのはクリスティアーネ・ギルデンレーヴェとウルリク・クリスチャン・ギルデンレーヴェだけでした。

スコーネ戦争後、妹ウルリカ・エレオノーラがスウェーデン王カール11世と結婚しました。しかし、1689年には、亡命中のホルシュタイン＝ゴットルプ公クリスティアン・アルブレヒトを支持したカール11世がデンマークに対して戦争を仕掛けるなど、緊張状態が生じました。クリスチャン5世は、クリスティアン・アルブレヒトを領国から追放したことが原因で、カール11世だけでなく神聖ローマ皇帝からも非難されましたが、最終的にはクリスティアン・アルブレヒトに領土を返還することでこの危機を回避しました。

これらの出来事を通じて、クリスチャン5世は複雑な政治状況の中で、自国デンマークの利益を守りながらも、ヨーロッパ各国の動向に翻弄されるという、王としての苦悩も経験しました。

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