クリスティアン・アウグスト (アンハルト＝ツェルプスト侯)

クリスティアン・アウグスト：エカチェリーナ2世の父、その生涯と時代

クリスティアン・アウグスト（1690年 - 1747年）は、アンハルト＝ドルンブルク侯、そしてアンハルト＝ツェルプスト侯という領主としての顔と、プロイセン王国の元帥という軍人としての顔を持つ人物でした。しかし、彼が歴史に名を残したのは、何と言ってもロシアの女帝エカチェリーナ2世の父であるという点でしょう。彼の生涯は、当時のヨーロッパの政治情勢と深く結びついていました。

生い立ちと軍人としてのキャリア

1690年、クリスティアン・アウグストはアンハルト＝ドルンブルク侯ヨハン・ルートヴィヒ1世の息子として生まれました。プロイセン国王フリードリヒ1世の庇護を受け、ベルリンの貴族学校で教育を受けました。1704年に父が亡くなると、兄弟と共同でドルンブルク侯領を相続しますが、彼は軍人の道を選び、プロイセン軍に入隊します。スペイン継承戦争では、ネーデルラント戦線やイタリア戦線で戦功を挙げました。マルプラケの戦いやモンス、ドゥエーの攻略戦に参加し、勇猛果敢に戦いました。

大北方戦争では、ウーゼドム島やヴォリン島の制圧に従事。戦後はシュテッティンに駐在し、連隊の訓練や要塞の強化に尽力しました。着実に昇進を重ね、1741年には歩兵大将、そしてシュテッティン総督に任命されます。その功績が認められ、1742年には元帥の地位を授与されました。

領主として、そしてエカチェリーナ2世の父として

1742年、アンハルト＝ツェルプスト侯ヨハン・アウグストが亡くなると、クリスティアン・アウグストは所領を相続し、アンハルト＝ツェルプスト侯となります。この頃、娘のゾフィー・アウグスタ・フリーデリケ（後のエカチェリーナ2世）に、ロシア皇太子との縁談が持ち上がります。妻ヨハンナ・エリーザベトの兄がロシアのエリザヴェータ女帝の婚約者であったという縁、そしてロシアとプロイセンの政治的な思惑が絡み合った結果でした。

当初、クリスティアン・アウグストは娘の正教への改宗に抵抗がありましたが、最終的には妻の説得を受け入れ、娘をロシアへと送り出します。しかし、彼は娘の結婚式に参加することを許されませんでした。1746年、兄の死により領地経営のためツェルプストに戻りますが、翌1747年に同地で生涯を閉じました。

クリスティアン・アウグストの遺産

クリスティアン・アウグストは、軍人として、領主として、そして何よりもエカチェリーナ2世の父として、激動の時代を生きました。彼の軍人としての功績は、プロイセン王国の発展に貢献しました。また、彼の娘であるエカチェリーナ2世は、ロシア帝国の黄金時代を築き上げ、啓蒙専制君主として名を残しました。クリスティアン・アウグストの生涯は、ヨーロッパの歴史における重要な転換期を象徴していると言えるでしょう。


参考文献
Ferdinand Siebigk: Christian August. In: Allgemeine Deutsche Biographie (ADB). Band 4, Duncker & Humblot, Leipzig 1876, S. 157–159.
en:Christian August, Prince of Anhalt-Zerbst

もう一度検索