クリスティアン・フォン・ブラウンシュヴァイク＝ヴォルフェンビュッテル

クリスティアン・フォン・ブラウンシュヴァイク＝ヴォルフェンビュッテル：狂信の公爵、その生涯と三十年戦争

クリスティアン・フォン・ブラウンシュヴァイク＝ヴォルフェンビュッテル（1599年9月20日 - 1626年6月16日）は、ブラウンシュヴァイク＝リューネブルク公の一員であり、ハルバーシュタット司教でもありました。彼は、三十年戦争におけるプロテスタント側の重要な指導者として知られ、「狂信者（der Tolle）」や「無法者の公爵（wilde Herzog）」という異名を持ちました。

生涯

ヴォルフェンビュッテル侯ハインリヒ・ユリウスと、デンマーク・ノルウェー王フレゼリク2世の娘エリサベトの間に生まれたクリスティアンは、母方の叔父であるデンマーク・ノルウェー王クリスチャン4世の元で教育を受けました。彼はヘルムシュテット大学に入学し、学問を修めました。1616年に一族のハルバーシュタット司教ルドルフが亡くなると、プロテスタントであったクリスティアンが後継としてハルバーシュタット司教領の監督に選出されました。この地位を得たことで、彼は豊かな財源を自由に使えるようになり、それを背景に軍事指導者として頭角を現していきました。

三十年戦争への参戦

1621年、クリスティアンはオラニエ公マウリッツの軍隊に加わり、ネーデルラントでスペイン軍と戦いました。その後、彼は自身の軍隊を組織し、ボヘミア王兼プファルツ選帝侯フリードリヒ5世の配下の将軍として、ヘーヒストの戦い（1622年）、フルーリュスの戦い（1622年）、シュタットローンの戦い（1623年）という3つの重要な戦闘に参加しました。

クリスティアンは、フランス＝ドイツ国境やネーデルラント全域での略奪や焼き討ちにも加わりました。彼は、傭兵隊長エルンスト・フォン・マンスフェルト伯爵と共に、カトリック軍のティリー伯とヘーヒスト及びシュタットローンで戦いましたが、これらの戦いでは敗北を喫しました。しかし、フルーリュスの戦いでは大きな勝利を収め、彼の活躍によってプロテスタント派の拠点都市ベルゲン・オプ・ゾームは解放されました。

騎兵戦を得意としたクリスティアンは、その戦いぶりから敵対するカトリック勢力から「残酷な乱暴者」と非難され、「狂信者」というあだ名を与えられました。しかし、この評判は皇帝派のパンフレットによるものであり、不当であるという見方もあります。

戦役（1622年 - 1623年）

クリスティアンは、1620年のビーラー・ホラの戦いで敗北し、ボヘミア王位を追われたフリードリヒ5世に仕えるようになりました。彼がフリードリヒ5世に仕えるようになった理由は定かではありませんが、フリードリヒ5世の妻エリザベスに騎士道上の愛を誓っていたことが影響した可能性も指摘されています。エリザベスの父であるイングランド王ジェームズ1世は、娘婿の戦争を支援するため、サー・ホレス・ヴィアー率いる軍隊をプファルツ選帝侯領に派遣しました。

1621年末までに、クリスティアンは1万人の兵を募ることができました。彼は自軍と共にヴェストファーレンで冬を過ごし、ミュンスター司教区とパーダーボルン司教区で多くの富を収奪しました。1622年、マンスフェルトがクリスティアンの軍隊との連携を求めたことで、クリスティアンの軍事活動は本格化しました。

1622年6月22日のヘーヒストの戦いで、クリスティアンはマンスフェルトと共に戦いましたが、大敗を喫しました。しかし、彼は軍勢の大半を失うことなく、プファルツから退避することができました。その後、プロテスタント連合軍はアルザスに拠点を移し、クリスティアンとマンスフェルトはロレーヌに進軍しました。ベルゲン・オプ・ゾームがスペイン軍に包囲されたことを知ると、両者は同市に進軍し、8月29日のフルーリュスの戦いでスペイン軍と交戦しました。この戦いで、クリスティアンは勇気と不屈の精神を発揮し、スペイン軍の戦線を突破し、ベルゲン・オプ・ゾームを解放することに成功しました。

しかし、この戦いでクリスティアンは多くの兵を失い、1622年から1623年にかけての冬をスペイン領ネーデルラントで過ごし、軍隊を再編しました。1623年の春には、クリスティアンの軍は約1万5000人にまで回復しました。

1623年の春、クリスティアンは、マンスフェルトやトランシルヴァニア公ベトレン・ガーボルらと共に、フリードリヒ5世主導によるボヘミア再奪取を計画しました。しかし、ティリーがこの計画を察知し、ニーダーザクセンに陣取ったことで、計画は困難に陥りました。さらに、マンスフェルトから財政的な理由で遠征が不可能であると告げられ、クリスティアンは劣勢を強いられました。

ティリーの軍隊に劣るクリスティアン軍は、オランダに留まることを余儀なくされました。しかし、クリスティアンはティリーに追いつかれ、8月6日のシュタットローンの戦いで大敗を喫しました。この戦いで、クリスティアン軍は壊滅的な打撃を受け、クリスティアン自身もハーグに逃亡しました。

敗北と死

クリスティアンの敗北は、三十年戦争における「プファルツ期」の終焉を意味しました。シュタットローンの戦いから3週間後、フリードリヒ5世は神聖ローマ皇帝フェルディナント2世との休戦協定に調印し、プロテスタント側の反乱を終わらせることを約束しました。これにより、神聖ローマ帝国はカトリック陣営によって支配されるかに思われました。

その後、クリスティアンはオランダやデンマーク王クリスチャン4世から多額の財政援助を受け、1626年にはヘッセン＝カッセル方伯モーリッツを味方につけてティリーの背後を奇襲する計画を実行に移そうとしました。しかし、ヘッセンにいたティリーに狙われ退却を余儀なくされ、ヴォルフェンビュッテルに進軍したものの、そこで病に倒れ、26歳という若さで亡くなりました。

クリスティアンの死は、プロテスタント軍にとって大きな痛手となり、その後の戦況に大きな影響を与えました。三十年戦争はその後も激化の一途を辿り、ヨーロッパ全土を巻き込む大戦へと発展していきました。

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