クリストフ・シェーンボルン

クリストフ・シェーンボルンは、1945年1月22日にボヘミア（現在のチェコ）で生まれました。父は画家、母は男爵家出身で、両親ともにドイツ系旧貴族の末裔です。シェーンボルン家は、歴史的に多くの高位聖職者を輩出してきた家系です。第二次世界大戦後、共産党支配下のチェコスロバキアで迫害を受けたため、生後9ヶ月で家族とともにオーストリアへ亡命しました。

1963年に高校卒業後、ドミニコ会に入り、パリ、ウィーン、ボルンハイムで神学と哲学を学びました。パリではパリ・カトリック大学卒業後、ソルボンヌ大学でビザンツ・スラヴのキリスト教神学を研究しました。1970年に司祭に叙階され、その後、レーゲンスブルク大学でヨーゼフ・ラツィンガー教授（後の教皇ベネディクト16世）に師事し、神学博士号を取得しました。1975年からはスイスのフリブール大学で教義学を教鞭をとりました。

1980年、教皇庁国際神学委員会委員に選出され、1987年には『カトリック教会のカテキズム』編集委員となりました。1991年にウィーン大司教座の補佐司教となり、1995年にはウィーン大司教に就任しました。1998年、ヨハネ・パウロ2世教皇により枢機卿に親任されました。2005年の教皇選挙では、恩師であるベネディクト16世の選出を支持しました。

シェーンボルン枢機卿は、教皇庁の教理省、東方教会省、教育省などのメンバーを務め、新福音化推進評議会にも参加しています。2012年には、新福音化を話し合う司教会議の議長に任命されました。2019年には、75歳を迎えるにあたり辞任を申し出ましたが、教皇フランシスコによって受理されず、現在もその職務を継続しています。2024年10月には、2025年1月でのウィーン大司教退任が発表されました。

シェーンボルン枢機卿は、危機管理能力に優れ、行政手腕も高く評価されています。ベネディクト16世からの信頼も厚く、「精神上の息子」と呼ばれるほどでした。枢機卿団の中では保守派に属しますが、漸進的な改革論者でもあるため、教会内の保守派と革新派の両方から好意的に見られています。そのため、有力な次期教皇候補として名前が挙がることもあります。

民族的にはボヘミア・ドイツ人に属し、チェコ人、オーストリア人、アイルランド人の血を引いています。母語のドイツ語に加え、フランス語、イタリア語、英語、スペイン語、ラテン語、そしてチェコ語を流暢に話すことができます。ハプスブルク家との関係も深く、金羊毛騎士団の騎士を務めています。2011年には、ウィーン大司教としてオットー元皇太子の葬儀を主宰しました。

シェーンボルン枢機卿は、「対話の出来る宥和型の現実主義者」と評され、カトリック教会とイスラーム世界、東方教会との対話も積極的に進めています。また、コンドームの使用については、性交渉時の使用は原則的に認められないものの、AIDSから身を守るための必要悪としての使用を認める見解を示しています。

カトリック教会の性的虐待事件に対しては、問題の解明を積極的に推進する立場をとっています。前任のウィーン大司教による性的虐待事件発覚後、この問題に深く関わるようになり、教会側の責任を厳しく追及しました。被害者に対しては十分な責任を果たせていないと批判し、問題解決に努力してきたベネディクト16世を擁護しました。

シェーンボルン枢機卿は、その多言語能力、幅広い知識、そして穏健な姿勢により、教会内外で広く尊敬を集める人物です。

もう一度検索