クリスマス・タイム

ビートルズの隠れた名曲「クリスマス・タイム」：その誕生から世界へ

1967年、ビートルズはファンクラブ会員向けに毎年恒例のクリスマスレコードを制作しました。その第5弾『Christmas Time Is Here Again』に収録された「クリスマス・タイム (Christmas Time (Is Here Again))」は、長らく一般には知られていなかった、特別な1曲です。

メンバー全員参加の貴重な楽曲

この楽曲は、ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターの4人が共同で作詞作曲を手掛けた、珍しい作品です。ブルースを基調としたバックトラックに、メンバー4人に加え、ジョージ・マーティンとビクター・スピネッティのボーカルが重なり、独特のハーモニーを生み出しています。9つのヴァースと繰り返されるインストゥルメンタル・ヴァースという構成も、この曲の個性的な魅力となっています。

クリスマスレコードという特別な舞台

ビートルズは1963年からクリスマスレコードの制作を始め、毎年ファンクラブ会員に無料で配布していました。初期はファンへのメッセージが中心でしたが、年を経るごとに寸劇や音楽が加わるなど、内容が充実していきました。『ローリング・ストーン』誌のジョージ・ランタグは、1967年のクリスマスレコードを「ビートルズのクリスマス・レコードの頂点」と評しています。このレコードには、架空のバンド「The Ravellers」がBBCラジオのオーディションを受けるというストーリー仕立ての寸劇が収録されており、「クリスマス・タイム」はその寸劇の一部を担う重要な楽曲となっています。

レコーディング：1夜限りのセッション

「クリスマス・タイム」のレコーディングは、1967年11月28日、EMIレコーディング・スタジオで行われました。18時から翌朝2時45分まで続いたこのセッションは、ジョージ・マーティンがプロデュース、ジェフ・エメリックがエンジニアを務めました。俳優のビクター・スピネッティも参加し、寸劇への出演だけでなく、ボーカルでも貢献しています。ベーシック・トラックは1テイクで録音され、リンゴ・スターのドラム、ジョージ・ハリソンのアコースティックギター、レノンのティンパニ、ポール・マッカートニーのピアノという編成となっています。その後、メンバーとマーティン、スピネッティは手作業でダブルトラックのボーカルをオーバーダビングしました。

長い眠りから覚めた楽曲

1967年のクリスマスレコード配布後も、「クリスマス・タイム」は長らく世に出ることはありませんでした。完全版が公式に発売されたのは2017年、ボックスセット『クリスマス・レコード・ボックス』においてです。それ以前は、1995年のシングル『フリー・アズ・ア・バード』のB面に短縮版が収録されたのみでした。また、1976年には6分42秒のフルバージョンが作成されましたが、これはEMIの内部関係者しか聴くことができず、海賊盤で初めて流通しました。様々なバージョンが存在するのも、この曲の複雑で興味深い歴史を物語っています。

カバーバージョンと現代への継承

「クリスマス・タイム」は、リンゴ・スター、R.E.M.、テリー・ドライパー、スミザリーンズ、エレファント・ストーンなど、多くのアーティストによってカバーされています。これは、この曲が単なるクリスマスソングにとどまらず、普遍的な魅力を持つ楽曲であることを示しています。

まとめ

「クリスマス・タイム」は、ビートルズの隠れた名曲であり、彼らの音楽的探求と、ファンクラブ会員への愛情が凝縮された作品です。長年にわたる秘蔵の楽曲が、現代に蘇り、新たなファン層を獲得していることは、ビートルズの音楽の持つ普遍的な魅力を示しています。その音楽性、レコーディングの裏側、そして歴史的なリリースの過程を知ることで、「クリスマス・タイム」への理解はさらに深まるでしょう。

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