クリス・ジョン

クリス・ジョン（本名：ヨハネス・クリスチャン・ジョン、1979年9月14日生まれ）は、インドネシア出身の元プロボクサーです。フェザー級を主戦場とし、世界ボクシング協会（WBA）世界フェザー級の長期王者として知られています。右構えのボクサーファイターであるジョンは、「ザ・ドラゴン」や「細身のインドネシア人」といった異名を持ちました。インドネシア国内では、エリー・ピカルやニコ・トーマスに続く3人目の世界王者であり、WBAのベルトを獲得した初めてのインドネシア人です。元散打選手としての経験も持ち、国内では少数派であるクリスチャンとして信仰を持つことでも知られていました。彼のキャリア初期はインドネシアのスタン・ランビンがトレーナーを務め、その後はオーストラリアのクレイグ・クリスチャンに師事し、マネージャーも兼任しました。

ジョンのプロキャリアは1998年6月4日に始まりました。プロデビュー後、順調にキャリアを積み重ね、1999年7月13日にはインドネシアフェザー級王座を獲得し、1度防衛に成功しました。さらに2000年5月5日にはインドネシアボクシング協会（IBA）のフェザー級王座も手に入れました。2001年11月9日には、パンアジアボクシング協会（PABA）のフェザー級王座を獲得し、このタイトルを5度にわたって防衛しました。これらの国内および地域のタイトル獲得は、彼が世界レベルで戦うための基盤となりました。

世界タイトルへの挑戦は2003年に実現します。同年9月26日、コロンビアのオスカー・レオンとWBA世界フェザー級暫定王座決定戦で対戦し、判定2-1の僅差で勝利し、暫定王座を獲得しました。その後、正規王者だったデリック・ゲイナーが他の団体王者との統一戦に敗れたため、2003年11月1日付けでクリス・ジョンはWBA世界フェザー級の正規王者に認定されました。これが彼の初の世界タイトル戴冠となります。

正規王者となったジョンは、以後長期にわたりその座を守り続けます。初防衛戦は2004年6月4日、日本の有明コロシアムで佐藤修選手を相手に行われ、3-0の判定勝利を収めました。2004年12月3日にはホセ・ロハス選手と対戦し、偶然のバッティングによる負傷判定引き分けで辛くも2度目の防衛を果たします。2005年4月22日には、正規王者認定のきっかけとなった元王者デリック・ゲイナーと対戦し、3-0の判定勝ちで3度目の防衛に成功しました。2006年3月4日には、後の名王者となるファン・マヌエル・マルケス選手とのビッグマッチが故郷インドネシアで行われました。この試合はローブローによるマルケス選手の減点もありましたが、ジョンが3-0の判定勝ちを収め、5度目の防衛に成功しました。

防衛回数を重ねる中で、ジョンは日本からの挑戦者も多く迎え撃ちました。2007年8月19日には武本在樹選手に9回終了TKO勝ちで8度目の防衛。2008年10月24日には後楽園ホールで榎洋之選手との指名試合を大差判定で制し、10度目の防衛に成功しました。また、シンガポールでも日本人選手との対戦があり、2012年5月5日には木村章司選手に判定勝ちで16度目の防衛、2013年4月14日には細野悟選手と地元インドネシアで対戦し、3回負傷引き分けで18度目の防衛となりました。

ジョンは海外での試合も経験しました。2009年2月28日にはアメリカ・テキサス州でロッキー・ファレス選手と対戦し、優勢に進めながらも判定引き分けとなり11度目の防衛。同年9月19日にはボクシングの聖地ラスベガスのMGMグランドでファレス選手と再戦し、今度は3-0の判定勝ちを収め、12度目の防衛を果たしました。正規王座として11度防衛後、彼はWBA世界フェザー級スーパー王者に昇格し、さらにスーパー王者として7度の防衛を重ねました。

しかし、長期にわたる王座も終焉を迎えます。2013年12月6日、オーストラリアでIBO世界フェザー級王者シンピウィ・ベトイェカ選手との王座統一戦に臨みました。この試合でジョンはキャリアを通じて初めてとなる苦戦を強いられ、6回終了時に試合を棄権。プロ初黒星を喫すると同時に、WBA世界フェザー級スーパー王座の19度目の防衛に失敗し、王座から陥落しました。IBO王座の獲得も叶いませんでした。この敗戦から間もない2013年12月19日、クリス・ジョンはプロボクサーからの引退を正式に発表しました。

クリス・ジョンは、その堅実なボクシングと卓越したディフェンス技術、そしてタフネスで知られ、インドネシアボクシング界に新たな歴史を刻みました。彼の18度に及ぶ世界王座防衛記録は、インドネシアのボクシングファンだけでなく、世界のボクシングファンに強い印象を残しました。特に無敗のまま長期政権を築いた時期は、彼のキャリアのハイライトと言えるでしょう。

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