クリプトコッカス症

クリプトコッカス症は、クリプトコッカス属の酵母様真菌が原因で起こる感染症であり、人を含めた動物に感染する人獣共通感染症です。特に、クリプトコッカス・ネオフォルマンスという種による感染が多く、呼吸器系に症状が現れることが特徴です。これらの真菌は、土壌や植物など自然環境中に広く分布しています。

クリプトコッカス症は、免疫機能が正常な人では感染しにくいものの、免疫抑制状態にある人にとっては日和見感染症として脅威となります。免疫力が低下していると、通常は体の免疫機構によって増殖が抑えられている菌が増殖し、病気を引き起こす可能性があります。

臨床所見

クリプトコッカス症の発生率は、年間で100万人あたり2人から9人と報告されています。致命率は約12％と決して低くありません。特にアメリカ合衆国では、患者の約85％がHIV感染者であるというデータがあります。この事実は、免疫不全状態がクリプトコッカス症の発症に大きく関わっていることを示しています。

症状

感染経路としては、真菌の胞子を吸い込むことで肺に感染することが最も一般的です。しかし、感染しても症状が現れない不顕性感染の場合もあります。症状が現れる場合、鼻汁の排泄や鼻孔に肉芽腫が見られることがあります。また、感染が肺から他の部位に広がると、髄膜炎や脳炎を引き起こす可能性があります。特にクリプトコッカス性髄膜炎は重篤な症状を引き起こすことがあり、頭痛、発熱、無気力、昏睡、人格変化、記憶障害などが現れることがあります。

診断

クリプトコッカス症の診断には、墨汁染色という特殊な染色法が用いられます。この方法で、分泌物などの検査材料を染色すると、クリプトコッカス属の菌が持つ莢膜が確認できます。さらに、血液や髄液などの体液から抗体を検出することで、診断を確定することができます。

治療

治療には、アムホテリシンBやフルコナゾールなどの抗真菌剤が用いられます。これらの薬剤は、真菌の増殖を抑え、感染を治療する効果があります。しかし、重症例では、これらの薬剤による治療でも予後が悪い場合があるため、早期発見と適切な治療が重要です。

関連項目

サブロー・ブドウ糖寒天培地
真菌症

参考文献

高島郁夫、熊谷進『獣公衆衛生学』（第3）文永堂出版、2004年。ISBN 4830031980。

外部リンク

クリプトコッカス症 - MSDマニュアル
クリプトコックス症の概要 - 国立感染症研究所
原発性肺クリプトコッカス症の2例 日本臨床外科学会雑誌 Vol.60 (1999) No.10 P2628-2631

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