真菌症

真菌症：その種類、治療、そして予防

真菌症とは、真菌（カビや酵母）がヒトや動物の組織に侵入し、異常増殖することで引き起こされる疾患です。私たちの体表や周囲環境には多くの真菌が存在しており、通常は問題ありませんが、免疫力の低下や皮膚の損傷などによって真菌が異常に増殖すると、真菌症を発症する可能性があります。

真菌症の種類

真菌症は大きく分けて、皮膚真菌症と深在性真菌症の2種類に分類されます。

1. 皮膚真菌症: 皮膚の角質層などに感染する真菌症です。
表在性皮膚真菌症: 皮膚の表面、角質層にとどまる比較的軽症な真菌症です。水虫（足白癬）、たむし、しらくもなどを引き起こす白癬菌感染症が代表的です。その他、カンジダによるカンジダ症やマラセチア菌による脂漏性湿疹なども含まれます。
深在性皮膚真菌症: 皮膚の真皮や皮下組織にまで感染が及ぶ真菌症です。スポロトリコーシスやクロモミコーシスなどが含まれ、表在性皮膚真菌症より重症化しやすい傾向があります。

2. 深在性真菌症: 皮膚より深い組織、臓器（脳、肺、心臓など）に感染する真菌症で、生命に関わる危険性も高いです。
日和見真菌症: 通常は人体に無害な真菌が、免疫力が低下した際に感染し病気を引き起こすものです。カンジダ症、アスペルギルス症、クリプトコッカス症などが代表的です。
輸入真菌症: 日本に本来生息していない真菌による感染症です。海外渡航歴のある人に多く見られます。コクシジオイデス症、ヒストプラズマ症などが含まれます。

真菌症の治療

真菌症の治療には抗真菌薬が用いられます。抗真菌薬は真菌の細胞壁合成を阻害したり、細胞膜の機能を破壊したりすることで真菌を殺菌・静菌する作用があります。

抗真菌薬は、真菌の種類や感染部位、患者の状態に応じて、局所適用（塗り薬など）や全身適用（内服薬、点滴など）が選択されます。真菌症の種類によっては、治療に長期間を要することもあります。特に深在性真菌症は、診断が遅れると重症化しやすく、致死率も高くなるため、早期診断と適切な治療が重要です。

深在性真菌症の一部は、日和見感染症として、免疫力が低下している患者さんに多く発症します。そのため、免疫抑制剤の使用や基礎疾患の管理なども治療において重要な要素となります。光線力学療法なども有効な手段として用いられる場合があります。

また、真菌症の治療においては、口腔内のケアも重要です。口腔内に存在する真菌の増殖を抑えることで、深在性真菌症の予防や治療効果の向上に繋がる可能性があります。クロルヘキシジン液などの抗菌剤を用いた口腔ケアが推奨されます。

真菌症の予防

真菌症の予防には、皮膚を清潔に保ち、乾燥状態を維持することが重要です。特に、汗をかきやすい部位はこまめに拭き取り、清潔を保つようにしましょう。また、免疫力を高める生活習慣を心がけることも大切です。

口腔内ケアも、真菌症予防において非常に重要です。歯垢や歯石の蓄積は、口腔内の真菌の増殖を促進し、歯周病や深在性真菌症のリスクを高めます。そのため、毎日の丁寧な歯磨きや定期的な歯科検診が不可欠です。

真菌症は、適切な予防と早期治療によって重症化を防ぐことができます。体の異変を感じたら、早めに医療機関を受診することが重要です。

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