クリミア自治共和国

クリミア自治共和国

クリミア自治共和国は、国際社会の多数がウクライナ領と認めるクリミア半島において、セヴァストポリ特別市とアラバト・スピット北部を除く地域を管轄する自治共和国です。2014年のクリミア危機を契機にロシアによる実効支配下に置かれていますが、ウクライナ政府および国際社会は、この編入を認めていません。

名称

自治共和国の名称は、ウクライナ語で「Автономна Республіка Крим（Avtonomna Respublika Krym）」、ロシア語で「Автономная Республика Крым（Avtomnaia Respublika Krym）」、クリミア・タタール語で「Qırım Muhtar Cumhuriyeti」と表記され、いずれも同義です。

ウクライナの憲法ではウクライナ語が公用語と定められていますが、クリミア自治共和国では住民の大多数が母語とするロシア語が広く使用されており、先住民であるクリミア・タタール人の言語も用いられています。

歴史

前史

クリミア半島には元来、テュルク系ムスリムのクリミア・ハン国が存在し、様々な民族が居住していました。18世紀末にロシア帝国がクリミア・ハン国を併合して以来、ロシア人やウクライナ人などのスラヴ系キリスト教徒の移住が進められました。その結果、ロシア帝国末期には、クリミアはロシア人が多数を占める地域となりました。

1921年、ソビエト連邦はクリミア自治ソビエト社会主義共和国を設置しましたが、クリミア・タタール人への自治権は不十分で、第二次世界大戦中には民族追放が行われ、自治共和国は廃止されました。

その後、クリミアはロシア・ソビエト連邦社会主義共和国のクリミア州となりましたが、1954年にウクライナ・ソビエト社会主義共和国へと移管されました。
1991年のソビエト連邦崩壊後、クリミアではウクライナからの独立を求める動きが見られましたが、最終的には自治共和国としてウクライナに留まることとなりました。

ウクライナ時代

1992年、クリミア議会はウクライナからの独立を宣言しましたが、ウクライナ政府はこれを無効としました。ロシアは当初、クリミアの独立を支持しましたが、チェチェン紛争の影響で支援を撤回し、クリミアの独立運動は沈静化しました。

1996年、ウクライナ憲法によってクリミア自治共和国の地位が定められ、1998年にはクリミア自治共和国憲法が制定されました。

この時期には、クリミア・タタール人の帰還と権利回復問題も発生し、民族間の対立が深刻化しました。

2014年クリミア危機

2013年から2014年にかけて、ウクライナ国内の親露派と親欧米派の対立が激化し、2014年2月には親ロシア派のデモがクリミアで拡大しました。武装勢力による地方政府庁舎や空港の占拠が相次ぎ、ロシアが軍事介入を開始しました。

ロシアへの編入

2014年3月16日、クリミアで住民投票が実施され、ロシアへの編入が賛成多数となりました。翌日、クリミアは独立を宣言し、ロシアとの間で条約を締結し、ロシア連邦の構成主体となりました。この編入は、ウクライナや多くの国際社会によって承認されていません。

政治

クリミア自治共和国の最高機関はクリミア自治共和国最高会議で、行政は閣僚会議が担います。しかし、2014年以降、ウクライナはクリミア半島の統治権を事実上失い、クリミア自治共和国における常駐大統領代理者という役職が名目上残されている状況です。

行政区画

クリミア自治共和国の首都はシンフェロポリで、主な都市にはヤルタ、ケルチ、バフチサライなどがあります。セヴァストポリは特別市として自治共和国には含まれません。

人口

2001年のウクライナ国勢調査によれば、クリミア自治共和国の総人口は約203万人で、都市部が約63％、農村部が約37％を占めています。

脚注

出典

参考文献

伊東孝之、井内敏夫、中井和夫編 『ポーランド・ウクライナ・バルト史』（世界各国史：20）-東京：山川出版社、1998年. ISBN 9784634415003（日本語）
黒川祐次著 『物語ウクライナの歴史：ヨーロッパ最後の大国』（中公新書：1655）-東京：中央公論新社、2002年. ISBN 4121016556（日本語）
Історія міст і сіл Української РСР: Кримська область. - Київ: УРЕ АН УРСР, 1971.（ウクライナ語）

外部リンク

クリミア自治共和国最高議会の公式サイト（ロシア語）（ウクライナ語）（クリミア・タタール語）（英語）
クリミア自治共和国政府の公式サイト（ロシア語）（ウクライナ語）（クリミア・タタール語）（英語）
クリミア自治共和国 // 消滅した国々 - ウェイバックマシン（2005年11月4日アーカイブ分）（日本語）

もう一度検索