クルシュ

クルシュは、オスマン帝国で使われていた通貨の一つで、現在ではいくつかの旧オスマン諸国で補助通貨として用いられています。トルコ語での本来の発音は「クルシュ」ですが、国外では「クルーシュ」や「クルス」といった発音もされます。

アラビア語では、複数形が「クルシュ (qurush, قروش)」、単数形が「キルシュ (qirsh, قرش)」となります。ただし、カナ表記やラテン表記では、ギルシュ・グルシュ (sg: girsh、pl: gurush) など、多くの異なる表記が存在します（アラブ語では単複の違い以外は同一表記）。

オスマン帝国のクルシュ

クルシュという名称は、イタリアをはじめとするヨーロッパ各地で発行されていた銀貨「グロシュ」に由来し、その語源はラテン語の「grossus」（厚みのある）に遡ります。ヨーロッパでは、クルシュは「ピアストル」とも呼ばれていました。ピアストルはイタリア語の「（金属の）板」（Piastra）に由来し、新大陸で発行されたメキシコドルをベネチア商人がこう呼んだことが始まりです。ベネチア商人がピアストルを大量に中東に輸出し流通させたことが、オスマン帝国が通貨改革を行い、メキシコドルと同等の価値を持つ通貨クルシュを作るきっかけとなりました。

1688年にはクルシュ銀貨が初めて鋳造され、その価値はエキュまたはスペインドルとほぼ同等でした。1844年からは、リラが正式な通貨となり、クルシュはその補助通貨としての役割を担うようになりました。

各国のクルシュ

現在、クルシュは以下の国々で補助通貨として使用されています。

トルコ: 1リラ = 100クルシュ。新トルコ・リラ時代には、「新クルシュ (yeni kuruş)」と呼ばれていました。
ヨルダン: 1ディナール = 10ディルハム = 100クルシュ（ピアストル） = 1000フィルス。
サウジアラビア: 1リヤル = 20クルシュ = 100ハララー。
エジプト: 1ポンド = 100エルシュ（ピアストル） = 1000マッリーム。エルシュ (ersh) とはキルシュのエジプト風発音です。
* スーダン: 1ポンド = 100クルシュ。

このように、クルシュはオスマン帝国から派生し、様々な国で独自の価値や名称を持ちながら、現在も使用され続けている興味深い通貨です。

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