クルト・ザンデルリング

クルト・ザンデルリング：激動の時代を生き抜いた名指揮者

クルト・ザンデルリング（1912年9月19日 - 2011年9月18日）は、ドイツの指揮者であり、20世紀の音楽界に大きな足跡を残しました。その生涯は、激動の時代を反映しており、音楽を通じて社会と深く関わりました。

生い立ちと亡命

ザンデルリングは、東プロイセンのアリス（現在のポーランド領）で生まれました。幼少期から音楽に才能を発揮し、ベルリン市立歌劇場で音楽家としてのキャリアをスタートさせます。しかし、ナチスの台頭により、ユダヤ系の出自を持つ彼は国籍を剥奪され、1935年にソビエト連邦へ亡命を余儀なくされます。

ソ連での研鑽

ソ連では、モスクワ放送交響楽団で研鑽を積み、1937年にはモーツァルトのオペラ『後宮からの誘拐』で指揮者デビューを果たします。その後、ハリコフ・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者、レニングラード・フィルハーモニー交響楽団の第一指揮者を歴任し、エフゲニー・ムラヴィンスキーの下で腕を磨きました。この時期に、ドミートリイ・ショスタコーヴィチと親交を深めたことは、彼の音楽観に大きな影響を与えました。

東ドイツでの活躍

1960年、ザンデルリングは東ドイツ政府の要請を受け帰国し、ベルリン交響楽団（現：コンツェルトハウス管弦楽団）の芸術監督、首席指揮者に就任します。彼は、このオーケストラを短期間で東ドイツ屈指のレベルにまで引き上げ、その名声を確立しました。1964年から1967年までは、シュターツカペレ・ドレスデンの首席指揮者も兼任し、その才能を遺憾なく発揮しました。

国際的な評価

1965年のザルツブルク音楽祭へのデビューを機に、ザンデルリングは西側諸国でも広く知られるようになります。1972年には、オットー・クレンペラーの補佐としてフィルハーモニア管弦楽団の首席客演指揮者に就任し、後に同楽団から名誉指揮者の称号を贈られました。日本へも数多く訪れ、読売日本交響楽団の名誉指揮者も務めています。

円熟期と引退

ベルリン交響楽団との緊密な関係を維持しつつ、フリーの指揮者として精力的に活動を続けました。2002年、高齢を理由に指揮活動から引退し、ベルリン響を指揮してブラームス、モーツァルト、シューマンの作品を演奏し、長きにわたるキャリアに幕を閉じました。

2011年9月18日、自身の99歳の誕生日の前日にベルリンで死去しました。

音楽的特徴とレパートリー

ザンデルリングは、ブラームスやブルックナーといったドイツ・オーストリア音楽、そしてショスタコーヴィチをはじめとするロシア・ソ連音楽を得意としました。ラフマニノフの交響曲を早い時期からレパートリーに取り入れたことや、マーラーの交響曲第10番の補筆完成版に独自の校訂を施したこと、シベリウスの交響曲に独自の解釈を加えたことでも知られています。

人柄

ザンデルリングは、音楽に対して真摯な姿勢を持ち、常に作品の本質を追求しました。その音楽は、深い感情と知性、そして人間味に満ち溢れており、聴衆の心を揺さぶります。また、温厚で謙虚な人柄は、多くの音楽家から尊敬を集めました。

息子たち

息子のトーマス、シュテファンは指揮者として、ミヒャエルはチェリスト、指揮者として活躍しています。

まとめ

クルト・ザンデルリングは、20世紀の音楽史における重要な存在であり、その音楽は今もなお多くの人々に感動を与え続けています。激動の時代を生き抜き、音楽を通じて社会に貢献した彼の功績は、永遠に語り継がれるでしょう。

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