クルマユリ

クルマユリ（車百合）

クルマユリ（学名：Lilium medeoloides A. Gray）は、ユリ科に属する多年生植物であり、その特徴的な外観と生育地域から多くの人々に親しまれています。特に寒冷地域に自生し、美しい花を咲かせることから高山植物として有名です。

特徴

この植物の鱗茎は白色で、直径約2 cmの球形をしています。茎の高さは30 cmから100 cmと変動し、茎の上部には5～6 cmの大きなオレンジ色の花が、まばらに1～数個咲きます。花には濃紅色の斑点があり、その美しさが際立っています。花期は7月から8月にかけてで、葉は6～15枚が茎の中央部で輪生し、上部にはさらに3～4枚がばらついて生えています。果実は倒卵型で、長さは約2 cmです。クルマユリという名前は、輪生する葉が車輪の輻（や）に似ていることに由来しています。

分布

クルマユリは、中国、韓国、サハリン、カムチャッカ、千島列島、そして日本と広範囲に分布しています。日本国内では主に北海道や本州の中部以北、さらに高山帯や亜高山帯の草原に見られます。この植物は特に栗駒山を代表する高山植物として、著名な植物学者である田中澄江の著書『新・花の百名山』に記載されており、観光客により多くの利用がされています。クルマユリの基準標本は函館市周辺のものです。さらに、青森県車力村（現在のつがる市）の村の花としても知られています。

利用

クルマユリの鱗茎は食用として知られており、アイヌ料理においても重宝されています。秋に掘り出した鱗茎は、中心の食べられない部分を取り除いた後、鱗片をほぐして洗い、米と一緒に炊きます。炊き上がった後は、まるで飯を潰すかのように杓子で鍋の片隅から取り出して頂きます。この料理は近隣住民に配る習慣があり、地域の人々にとっても大切な食文化の一部です。

鱗茎は地域により異なる名前で呼ばれています。たとえば、北海道西部のアイヌ語方言では「ニヨカイ」や「ニノオカイ」と呼ばれ、北海道東部では「パララ」、樺太地方では「ヌマハプル」や「スマリエノンカイ」などと多様な名称が存在します。

種の保全状況

日本各地では、環境省によるレッドリストにおいてクルマユリが指定されています。生育環境の変化や、栽培目的の採集、さらにシカによる食害などが要因となり、減少傾向にある地域が確認されています。特に、石川県産のサドクルマユリは絶滅危惧I類に指定されており、保護が求められています。神奈川県では絶滅危惧IA類、徳島県でも絶滅危惧I類に指定されているほか、他の都道府県でもその保全状況は注視されています。

分類

クルマユリにはいくつかの品種や変種があり、その中にはフナシクルマユリ（斑無車百合）やチシマクルマユリ（千島車百合）、クロバナクルマユリ（黒花車百合）などがあります。また、近縁種にはコオニユリがあり、葉の付き方が異なることで区別されることができます。

その美しさと利用価値から、クルマユリは多くの人々に愛され続けています。

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