クレイモア作戦

クレイモア作戦：ノルウェー奇襲とエニグマ暗号機

1941年3月4日、第二次世界大戦下のノルウェー、ロフォーテン諸島。イギリス軍コマンドスによる大胆な奇襲作戦「クレイモア作戦」が展開されました。この作戦は、ドイツ軍の魚油とグリセリン生産拠点を叩くことを目的としていました。ロフォーテン諸島は、ドイツ軍の軍需産業に不可欠なこれらの資源の主要供給地だったのです。

作戦の背景

ダンケルク撤退後、イギリス首相ウィンストン・チャーチルは、ドイツに打撃を与えつつ、国民の士気を高める作戦を模索していました。その結果生まれたのが、特殊訓練を受けたコマンド部隊による奇襲作戦です。 当初のコマンド部隊の作戦は成功とは言い難く、成果が乏しいものもありましたが、ロフォーテン諸島への奇襲は、その後の作戦のあり方を大きく変える転換点となりました。

作戦の展開

作戦には、第3コマンド部隊と第4コマンド部隊、陸軍工兵隊、そしてノルウェー海軍の兵士らが参加。イギリス海軍の駆逐艦と輸送艦の護衛を受け、上陸作戦は抵抗を受けることなく成功しました。

コマンドスは、事前に計画された通り、ドイツ軍との接触を最小限に抑えつつ、魚油工場を破壊。3600トンもの魚油とグリセリンが灰燼に帰しました。さらに、イギリス海軍は艦砲射撃によって、海上輸送中の1万8000トンもの資源を撃沈しました。

しかし、クレイモア作戦最大の成果は、ドイツ軍の武装トロール船「クレブス」から鹵獲したエニグマ暗号機とコードブックでした。この暗号機とコードブックは、ブレッチリー・パークの暗号解読チームにとって、ドイツ海軍の暗号解読に大きな突破口を開く鍵となりました。これにより、イギリスはUボートの行動を予測することが可能となり、戦況に大きな影響を与えたのです。

作戦におけるイギリス軍の損害は、兵士1名の軽傷のみという驚くべき軽微なものでした。一方、ドイツ側は228人の捕虜、さらにノルウェーの協力者らも多数損害を受けました。

作戦の評価

クレイモア作戦は、チャーチルや特殊作戦執行部からは、ドイツ軍の大部隊をノルウェーに釘付けにした成功作戦と評価されました。しかし、作戦に参加したノルウェー人の中には、その価値を疑問視する声もありました。 この作戦の成功は、イギリスとノルウェーの視点によって大きく異なっていたのです。

作戦後の影響

クレイモア作戦は、ノルウェーにおけるコマンド部隊の作戦の第一歩となりました。この成功を機に、ノルウェー第1独立中隊が設立され、後のノルマンディー上陸作戦にも繋がっていくこととなります。また、この作戦以降、ドイツ軍はロフォーテン諸島への駐留兵力を増強し続けました。

まとめ

クレイモア作戦は、限られた兵力と資源で、大胆な奇襲攻撃を成功させた作戦でした。魚油工場の破壊、エニグマ暗号機の獲得、そしてドイツ軍への打撃といった多大な成果を挙げた一方で、作戦の評価については、イギリスとノルウェーの間で意見が分かれるなど、複雑な側面も持っていました。しかし、この作戦は、第二次世界大戦における特殊作戦のあり方を大きく変え、後の戦況にも影響を与えたことは間違いありません。この作戦が、イギリスの戦意を高揚させ、ドイツへの打撃を与えたことは、歴史的事実として評価できます。同時に、この作戦は、特殊作戦の成功と失敗、そしてその評価の難しさについても示唆を与えてくれています。

もう一度検索