クロアチア語版ウィキペディア

クロアチア語版ウィキペディアとは

クロアチア語版ウィキペディアは、クロアチア語で編集されているオンライン百科事典です。2003年2月16日に開設され、現在では22万件を超える記事が掲載されています。しかし、その内容は中立性や正確性に欠ける部分があると指摘されており、特に2013年以降、歴史修正主義的な記述や特定の政治的イデオロギーの偏向が問題視されています。

歴史と現状

クロアチア語版ウィキペディアは、開設当初から多くの人々の協力によって成長してきました。しかし、一部の管理者や編集者による偏った編集が行われるようになり、特に第二次世界大戦中のウスタシャ体制に関する記述において、その犯罪行為を矮小化したり、否定したりする傾向が見られるようになりました。また、反セルビア人や反LGBTといった差別的な言説も含まれていると指摘されています。

内容の偏向

2011年の研究では、クロアチア語版ウィキペディアとクロアチア百科事典の内容が比較されました。その結果、クロアチア語版ウィキペディアは、クロアチア百科事典に比べて事実誤認が多く、特に哲学の分野で誤りが目立つことがわかりました。また、情報量や客観性においても、クロアチア百科事典に劣るという評価が下されました。

論争と批判

2013年、クロアチア語版ウィキペディアの右翼的な偏向に対する批判がメディアで高まりました。きっかけは、Facebookページ「hr.wikipedia（クロアチア語版ウィキペディア）の不名誉の暴露」でした。記事の内容が歴史修正主義的であることや、特定の民族や性的指向に対する差別的な表現が含まれていることが問題視され、クロアチア政府も学生・生徒に対してクロアチア語版ウィキペディアの利用を避けるよう呼びかけました。

ウィキペディア共同創設者のジミー・ウェールズも、この問題について認識しており、クロアチア語版とセルビア語版のウィキペディアが並立していること自体に疑問を呈しています。

歴史家の見解

歴史家からも、クロアチア語版ウィキペディアの内容に対する批判が出ています。ロベルト・クレリッチ教授は、クロアチア語版ウィキペディアが「誤った、捻じ曲げられた事実を伝えて己の政治信条を推進するために使われた道具に過ぎない」と指摘し、スニェジャナ・コレンも記事の内容を「バイアスと悪意がかかっていて、一部の内容は無学によるものである」と批判しています。

ヤセノヴァツ強制収容所に関する記述

特に問題視されているのが、ヤセノヴァツ強制収容所に関する記述です。クロアチア語版ウィキペディアでは、この強制収容所を「採集所」あるいは「労働所」と表現し、そこで展開された犯罪や犠牲者数を隠蔽しようとする傾向が見られます。フルヴォイェ・クラシッチは、このような記述が「ウスタシャのプロパガンダと同じ言葉を使っている」と批判しています。

ウィキメディア財団の対応

ウィキメディア財団は、クロアチア語版ウィキペディアの問題に対処するため、偽情報評価者の募集や、問題のある管理者グループの排除などの措置を講じています。2021年6月には、クロアチア語版ウィキペディアの偽情報アセスメントを公開し、問題の解決に向けて取り組んでいます。

クロアチア語版ウィキペディアの問題は、ウィキペディアの信頼性や中立性に対する重要な課題を提起しています。今後、ウィキメディア財団やコミュニティによる継続的な努力によって、より信頼できる情報源となることが期待されます。

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