クロスオーナーシップ (メディア)

メディアにおけるクロスオーナーシップとは

クロスオーナーシップとは、新聞社が放送局に資本参加するなど、特定の企業や資本が複数のメディアを支配する状態を指します。これは、言論の自由と多様性を確保する上で問題視されており、多くの国で規制の対象となっています。

クロスオーナーシップ規制の背景

言論の自由と多様性を保障するためには、様々な人々がメディア事業に参画できる機会が必要です。特定資本によるメディアの支配は、情報の発信を偏らせ、言論の自由を脅かす可能性があります。そのため、多くの国ではマスメディア集中排除原則に基づき、クロスオーナーシップを規制しています。

メディア・コングロマリットの台頭

しかしながら、現実には世界中でメディアグループの買収・再編が進み、複数のメディア媒体を傘下に持つ巨大なメディア・コングロマリットが存在感を増しています。その代表例が、ルパート・マードック氏が率いるニューズ・コープです。また、21世紀に入り、規制緩和の動きも出てきています。

各国における現状

アメリカ合衆国

アメリカでは、1920年代からクロスオーナーシップの排除に向けた動きがありました。1975年には、連邦通信委員会（FCC）が規制を強化しましたが、2002年以降、経営効率化の観点から規制緩和の議論が始まり、2017年には規制が撤廃されました。これにより、メディア統合が進む一方、中小メディアの存続が危ぶまれています。

イタリア

イタリアでは、フィニンヴェストがメディアセットや新聞「イル・ジョルナーレ」を傘下に収めるなど、メディアの集中が進んでいます。

日本

日本では、マスメディア集中排除原則の観点から、メディア間の距離を置くべきとされています。しかし、実際には読売新聞グループが日本テレビを支配するなど、新聞社が放送局を傘下に収めるケースが多く見られます。特に、1975年のネットチェンジ（腸捻転解消）により、キー局と地方局、新聞社の関係が整理され、系列化が進みました。また、地方では、地方紙が地元テレビ局に出資することで、クロスオーナーシップが成立しています。

日本におけるクロスオーナーシップの現状

日本の放送業界では、フジ・メディア・ホールディングスや日本経済新聞社など、複数のメディアを所有する企業が存在します。また、地方では、山形新聞社のように、地域内の複数のテレビ局やラジオ局に資本参加しているケースも見られます。このように、日本ではクロスオーナーシップが温存されており、その影響力が問題視されています。

クロスオーナーシップの問題点

メディアの独立性の喪失

クロスオーナーシップが進むと、メディアが特定資本の意向に左右されやすくなり、報道の公平性や独立性が損なわれる可能性があります。例えば、新聞がテレビやラジオを批判することに及び腰になったり、自社の問題点を報道しなくなるなどの弊害が指摘されています。

情報操作の危険性

メディアが特定資本に支配されると、情報操作が行われる危険性があります。本来報道されるべき問題が報道されなくなったり、情報が偏って伝えられる可能性があります。その結果、世論が歪められる恐れがあります。

新規参入の阻害

クロスオーナーシップは、メディア業界全体を護送船団方式のシステムに変え、新規参入希望者を排除する要因にもなります。その結果、メディアの多様性が失われ、既得権益が温存される可能性があります。

地方における情報格差の拡大

地方では、地方紙が地元の放送局を支配することで、地域間の情報格差が拡大する可能性があります。例えば、スポーツイベントなどの放送が特定の地域に限られるなど、情報へのアクセスが制限されることがあります。

メディアの権力への傾斜

新聞社が放送局を所有することで、権力の影響を受けやすくなるという問題点も指摘されています。メディアが権力に迎合することで、民主主義が損なわれる危険性があります。

まとめ

クロスオーナーシップは、メディアの多様性や独立性を損ない、情報操作や権力への傾斜を招く危険性があります。言論の自由と民主主義を守るためには、クロスオーナーシップを適切に規制し、メディアの健全な発展を促していくことが求められます。