メディア・コングロマリット

メディア・コングロマリットとは

メディア・コングロマリットとは、放送、新聞、映画、出版、インターネットなど、多岐にわたるメディアコンテンツ企業を傘下に収める巨大な複合企業のことです。これらの企業は、異なるメディアを横断的に展開することで、相乗効果を生み出し、その影響力を拡大しています。単なるコングロマリットとは異なり、メディア・コングロマリットは、情報の発信と文化形成において重要な役割を担っています。

本来のコングロマリットは、M&Aを通じて、本業とは異なる多角的な事業展開を行う企業を指し、その複雑さから企業価値が低く評価される傾向があります。しかし、メディア・コングロマリットは、複数のメディアを統合することで、コンテンツ制作、流通、広告収入の最大化を図り、競争力を強化することで、利益を追求しています。これにより、単なるコングロマリットとは異なり、メディア業界における支配的な地位を築くことが可能です。

世界のメディア・コングロマリット

アメリカ合衆国には、以下の4社が代表的なメディア・コングロマリットとして知られています。

コムキャスト（NBCユニバーサル）
ウォルト・ディズニー・カンパニー
パラマウント・グローバル
ワーナー・ブラザース・ディスカバリー

これらの企業に加え、ソニーグループ、ヴィヴェンディ、ベルテルスマンも世界的なメディア・コングロマリットとして扱われることがあります。これらの企業は、年間売上高が数百億ドルに達する巨大企業です。

その他、ジョン・マローン率いるリバティ帝国やマイクロソフトもメディア・コングロマリットとして認識されることがあります。

日本のメディア・コングロマリット

日本では、フジサンケイグループがメディア・コングロマリットと自らを定義しています。フジ・メディア・ホールディングスは、フジサンケイグループを統括する持株会社であり、多様な事業を展開しています。その他、読売新聞グループ本社やKADOKAWAも、メディアグループを形成しています。

しかし、毎日新聞グループやNHKは、事業の大部分が新聞事業や公共放送であるため、メディア・コングロマリットには該当しません。

メディア・コングロマリットの歴史

英米における形成

1980年代、衛星放送やCATVの登場により、メディア業界は大きな変革期を迎えました。アメリカとイギリスでは、規制緩和が進められ、メディア再編が加速しました。ルパート・マードック率いるニューズ・コーポレーションは、新聞社を買収し、衛星放送事業にも進出しました。アメリカでは、放送の公平原則が撤廃され、FOXネットワークなどの新しい放送局が登場しました。

1990年代には、タイム・ワーナーやディズニーなど、巨大メディア企業が誕生しました。2000年代には、AOLとタイム・ワーナーが合併しましたが、ITバブル崩壊により分離されました。また、NBCユニバーサルが設立され、コムキャストに買収されました。これらの出来事は、メディア業界における大規模な再編の始まりを告げていました。

日本における民放の誕生と新聞社

日本では、1950年代に民間放送が開始され、新聞社がその設立に深く関わりました。1970年代には、放送局と新聞社の資本関係が整理され、現在の放送ネットワークの基礎が築かれました。

フジサンケイグループの形成

1957年、ニッポン放送、文化放送、東宝、松竹、大映が共同でフジテレビジョンを設立しました。その後、産経新聞社と連携し、1967年にフジサンケイグループを結成しました。フジサンケイグループは、メディア・コングロマリット化を志向し、グループ内の連携を強化しました。

マードック・ソフトバンクによるテレビ朝日買収騒動

1996年、ルパート・マードック率いるニューズ・コーポレーションと孫正義率いるソフトバンクが、テレビ朝日の主要株主となり、経営への参画を試みました。しかし、テレビ朝日や朝日新聞社の反対により、この買収は失敗に終わりました。

フジサンケイグループの再編と認定放送持株会社

2000年代、フジテレビジョンはニッポン放送の買収を試み、ライブドアによる買収騒動を経て、ニッポン放送を完全子会社化しました。2007年には放送持株会社制度が導入され、フジ・メディア・ホールディングスが誕生しました。

FANGAMの台頭と米メディア・コングロマリットの大型再編

2010年代、ネットフリックスなどの配信サービスの普及により、ケーブルテレビ市場が衰退し、既存メディア企業は再編を迫られました。

AT&Tによるタイム・ワーナーの買収とその後のスピンオフ、21世紀フォックスのディズニーへの売却など、大規模な再編が行われました。また、CBSとバイアコムの合併や、FOXコーポレーションによるOTTプラットフォームの買収など、メディア業界の変革が進んでいます。

2023年、ルパート・マードックが引退し、ニューズ・コーポレーションとFOXコーポレーションの会長職を退任しました。また、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーとパラマウント・グローバルの合併交渉が報じられ、2024年にはパラマウントがスカイダンスとの合併を発表しました。

規制

一部では、クロスオーナーシップやコンテンツの垂直統合を制限すべきとの意見もありますが、世界的には規制緩和の傾向にあります。これは、伝送路の多様化が背景にあります。

メディア・コングロマリットは、情報発信において大きな影響力を持つため、その動向は社会に大きな影響を与えます。これらの企業の動きを理解することは、現代社会を理解する上で非常に重要です。

参考文献
河内孝『次に来るメディアは何か』 2010年
山本浩『仁義なき英国タブロイド伝説』 2004年

もう一度検索