クロツラヘラサギ

クロツラヘラサギ

クロツラヘラサギ（黒面箆鷺、学名: Platalea minor）は、ペリカン目トキ科ヘラサギ属に分類される鳥類です。

分布

クロツラヘラサギは、東アジアに広く分布しており、繁殖地としては朝鮮半島西岸部や中国遼寧省沿岸部、ロシア沿岸部などが挙げられます。冬季になると、カンボジア、中国沿岸部、台湾、香港、日本、ベトナムなどの地域で越冬します。日本では、主に九州や沖縄県に冬鳥として飛来します。

形態

全長は70～80cm、翼を広げると110cmにもなります。体重は1,580～2,200g程度です。全身は白い羽毛で覆われており、眼先、嘴、後肢が黒いのが特徴です。繁殖期になると、頭部に冠羽が伸び、冠羽や胸部、眼先の皮膚が黄色みを帯びます。幼鳥は、外側の風切羽の縁が黒色をしています。

生態

クロツラヘラサギは、干潟、河口、池、水路などの湿地に生息しています。満潮時には、ヨシ原、干潟、池、低木林、堤防などで休息します。樹上に止まることもあります。

食性は肉食性で、魚類や甲殻類などを捕食します。干潟や浅瀬で、嘴を水中に浅く差し込み、細かく振動させながら左右に振り、獲物を探します。

繁殖は、無人島の断崖にある岩棚に、木の枝を組み合わせた巣を作りますが、古い巣を再利用したり、アオサギなどの巣を奪うこともあります。産卵期は5月下旬から6月上旬で、一度に3個の卵を産みます。雌雄ともに抱卵し、抱卵期間は約26日間です。雛は孵化後、約11日で巣立ちます。飼育下では、オスが生後5年、メスが生後3年で性成熟した例が報告されています。

人間との関係

クロツラヘラサギは、2017年時点で生息数が増加傾向にあります。しかし、工業開発や養殖池への転換などによる生息地の破壊、農薬による中毒、卵の採取など、人為的な影響が懸念されています。生息状況を把握するため、標識や発信機による調査、越冬個体の一斉カウントなどの試みが行われています。1990年代初頭には約300羽だったものが、2012年には2,693羽が確認されています。

日本における状況

日本では、以前はまれな冬鳥でしたが、2014年時点では、主に九州、沖縄県、山口県で定期的に越冬する個体が見られます。しかし、鉄道や道路建設、堤防建設、埋め立てなどによる生息地の破壊や獲物の減少、釣り糸による絡まり、粗大ごみによる嘴の損傷、送電線への衝突など、多くの脅威にさらされています。

2020年には国内希少野生動植物種に指定され、卵を含めた捕獲や譲渡が原則禁止されています。越冬地として、荒尾干潟と漫湖がラムサール条約に登録されています。万之瀬川河口域が国の天然記念物に、錦江湾周辺が国立公園に指定されています。しかし、保護対策が十分に行われていない越冬地も多く存在します。

1990年代初頭には十数羽だった個体数が、2012年には283羽まで増加しています。また、近年は越夏する個体も見られるようになり、2010年には25羽が確認されました。沖縄県では、絶滅危惧IB類に指定されています。

その他

* 環境省レッドリスト: 絶滅危惧IB類 (EN)

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