トキ科

トキ科（Threskiornithidae）

鳥綱ペリカン目に含まれる科の一つで、トキやヘラサギなどを含む鳥類のグループです。かつてはコウノトリ目に分類されていましたが、近年の研究によりペリカン目に移されました。世界各地に分布しており、水辺環境に適応した独自の形態や生態を持ちます。

分類

トキ科は、さらにトキ亜科（Threskiornithinae）とヘラサギ亜科（Plataleinae）の二つの亜科に大きく分類されます。

• - トキ亜科（Threskiornithinae）

嘴が下方に湾曲していることが特徴です。ニッポニア属のトキ（Nipponia nippon）は日本でも知られています。他にもテリハトキ属（Bostrychia）、オナガトキ属（Cercibis）、シロトキ属（Eudocimus）、ハゲトキ属（Geronticus）、マダガスカルトキ属（Lophotibis）、アオアシトキ属（Mesembrinibis）、サカツラトキ属（Phimosus）、ブロンズトキ属（Plegadis）、アカアシトキ属（Pseudibis）、カオグロトキ属（Theristicus）、クロトキ属（Threskiornis）など多様な属が含まれます。最大種であるオニトキ（Pseudibis giganteua）もこの亜科に属します。

• - ヘラサギ亜科（Plataleinae）

ヘラサギ属（Platalea）のみが含まれ、嘴の先端がへら状に幅広いことが特徴です。ベニヘラサギ（Platalea ajaja）やクロツラヘラサギ（Platalea minor）などが知られています。

分布

アフリカ、オーストラリア、北アメリカ、南アメリカ、ユーラシアの各大陸をはじめ、インドネシアやサントメ・プリンシペ、日本など、世界中の広範な地域に生息しています。特に熱帯から温帯にかけての湿潤な環境に多く見られます。

形態

トキ科の鳥類は、全体的に細長い体つきをしています。全長は種によって大きく異なり、最も大きいオニトキは105cmに達します。最大の特徴の一つは嘴の形状で、多くの種では下向きに大きく湾曲しています。一方、ヘラサギ属の嘴はさらに平たく広がり、先端が独特のへら状になっています。これは水中や泥中の獲物を探すのに適した構造です。

後肢や趾は比較的長く発達しており、泥地や浅瀬を歩き回るのに役立ちます。成鳥は、顔や頭頸部の一部の皮膚に羽毛がなく、裸出している種が多く見られます。雌雄の見た目は似ていますが、一般的に雄の方が雌よりもわずかに大きい傾向があります。

生態

主に湖沼の水辺、湿地帯、サバンナの水辺といった環境に生息しています。活動時間は日中で、多くの種は大きな群れを形成して生活する社会性の高い鳥類です。飛翔する際は、長い頸部を前方にまっすぐ伸ばして飛びます。

食性は動物食または雑食で、幅広い種類の餌を食べます。昆虫類、甲殻類（エビやカニ）、貝類、魚類、両生類、動物の死骸、さらには果実なども餌とすることがあります。特に優れた触覚を利用した採食が得意で、水や泥の中に嘴を差し入れたり、地面を掘り起こしたりして、嘴に触れた獲物を素早く捕らえます。

繁殖は卵生です。営巣は岩棚の上や樹上で行われることが多く、小枝などを組み合わせて比較的大きな巣を作ります。卵を産んだ後は、雌雄が協力して雛を育てます。

人間との関係

一部のトキ科の鳥類は、人間活動の影響を受けて生息数が減少しています。主な要因として、開発による湿地などの生息環境の破壊、農薬の使用による餌や環境の汚染、狩猟、あるいは漁業や農業への影響から「害鳥」と見なされて駆除されることなどが挙げられます。保全活動が必要な種も少なくありません。

関連項目

• - ペリカン目

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